CDLマガジン
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vol. 041
profile
津崎忠文
ライター
ボランティア送迎は毎日楽しくて、ロングドライブもぜんぜん苦にはなりませんでした。ほとんどのボランティアは若くて元気で、とても感じの良い人たちでした。今もフェイスブックでつながっている人たちはみな、それぞれのステージで頑張っていらっしゃいます。そんな消息を知るにつけ、とてもうれしくてそれはまた私の励みにもなっています。
さて、私には当時、送迎に対しては私なりのこだわりがありました。それは、参加ボランティアを拠点に運ぶ前に彼ら、彼女らに被災地の現状を自分の目でしっかりと見て、心に焼き付けてもらい、ボランティア終了後はそれぞれの地元でそのことを伝えて欲しいということでした。
一定期間ボランティアに参加できる人は、そのうち被災地の現状を目にすることができるでしょうが、短期の休暇を利用してボランティアに参加する人はややもすると、宿泊所と作業現場との行き帰りで日が暮れて、休暇の終了と同時に帰還することになりかねません。それで、最初の日に被災地案内をすることが私のルーティンになりました。
被災現場に立つ反応はさまざまで、みなさん、言葉少なく物思いに沈んでいるようでした。あぜんとした表情が忘れられません。なかには、あまりの光景にうずくまって嗚咽をもらす人もいました。
そんなある日ボランティアを乗せて、たしか女川の海岸付近を案内していた時です。
「それは起こりました。」
海岸端の水の色が青く美しく、透明に輝いていました。そして、その下に見える瓦礫の雑然とした重なり。 美しい違和感! 魅入られたようにしばらく見つめていましたが、出発しようと前を向くと、
「道がない!」 「えっ えっ」
目の前に広がるのは海、右も左も、後ろも前も! 不気味な思いの後で、地盤の沈下と満潮に思いが至りましたが、時すでに遅し。道がわからなくなっているので動けない。
しばらくすると、板切れがあちこちからぷかぷかと車の周りを取り囲む。
まさに海の上の日産エルグランド(映像は美しそう)
潮が引いてようやく脱出できました。東日本大震災にかぎらず、大きな地震がおきたところでは必ずと言っていいほど、地盤沈下がおきています。熊本の大地震のときもそうでした。マンホールがさながらキノコのように地面から突き出していました。そして、橋桁と路面に段差ができます。30 センチも40 センチもです。当然通行止になります。
教訓としては、おおきな地震が起きた時は橋のある道路を避難路には絶対しない。
事前に橋の無い避難路を考えておいたほうが良い。津波の水は前からだけではなく、横から、後ろから押し寄せてきますよ。そして、車での避難は避けるべきです。遠くへ避難しようと考えるのは理解できますが、道路は車であふれ渋滞になります。できるだけ素早くより高いところへ。素早い対応が身を守る鍵です。
そして、・・・・海には近づかない。
実の話が、私はもういちど、似たような失敗をしてしまいます。石巻の北上川河畔そばの拠点に向かう途中でも、満潮の水に巻かれたのです。いずれも大事には至らなかったのですが、運転していたエルグランドは次の車検の時に
そのツケを払うことになります。車体の下がすっかり腐食していて、高額見積もりを受ける羽目になりました。
運転していた道がこつぜんと消えたら、あなたは冷静でいられますか?
被災地ではいろいろなことが起こりました。次回はそのうちのひとつ
「叱られて、謝られてそして泣かれて」です。 See you soon!