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vol. 089

両親から受け継いだ つよくやさしい場所「BASE谷の杜から」

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樺山に空き家を活用したイベントスペースがあるのをご存知でしょうか?
その名も「BASE谷の杜から」。
今回は、地域の方からこの場所を取材してほしいというリクエストがあり、この家で生まれ育った内窪 弘子(うちくぼ ひろこ)さんにお話を伺ってきました。

諦めかけていた広大な敷地の管理。地域に開放したきっかけとは?

内窪さんは、もともと病院で看護師として従事し、その後は三股町社協で訪問看護ステーションの管理者や、ケアマネージャーなど相談支援事業に20年以上携わって来られました。
現在は、三股町社協を退職され、ご自身の活動の傍ら、空き家となった実家をご夫婦で整備し、ツリーハウスを併設した「BASE谷の杜から」の管理をされています。

「この家は私が生まれ育った家なんです。母が施設に入って以降ずっと空き家になっていたんですが、一昨年くらいから地域に開放しています。イベントや何かしようと思っても場所を探すって難しいじゃないですか。でもここならいつでも使ってもらえますしね」
と話す内窪さん。とても穏やな口調で話してくださる内窪さんですが、敷地内にツリーハウスをつくってしまうほどのエネルギーがどのようにして湧いてきたのか、気にならずにはいられません。

「本当はね、ここを壊してしまおうと思ってたんです。母が生きている間はなんとか維持したいと思っていたけど、私は別のところに住んで通うのも大変だし、年齢も重なって諦めかけていて。でもちょうどその時に、家を貸してほしいという人がいたり、子どもたちの支援をしているタテヨコナナメの方から場所を貸してほしいという声がかかった。さらに同じ時期に孫も生まれて。誰でも来られるような遊び場を作れたらいいなと思ったのが最初のきっかけでした

たった一つの黄色いブランコで見違える場所に

そこから内窪さんご夫婦の土地を作り直す作業が始まりました。内窪さんは、その作業を「土地のリノベーション」と言います。

建物のリノベーションと同じように、自分たちが生まれ育った土地をもう一度生まれ変わらせることができれば嬉しいなと思い、夫と一緒にやってみよう!ということになりました」
土地を整備したら、まずお孫さんのためにブランコをつくりたかったという内窪さんは、大工さんに相談。

「大工さんたちにお願いしてつくってもらったんですが、黄色に塗り替えたら、その場所が一瞬にしてとっても可愛いらしい場所になったんです。それをきっかけに、地域の人たちも来てもらえるようにツリーハウスをつくろう!という気持ちになって。この土地を守らなきゃいけないという義務感から、みんなが楽しめる場所にしたいという想いに変わっていったんです

▲ツリーハウスに案内してくれる内窪さん

その時のことを嬉しそうに話してくださる笑顔がとても印象的な内窪さん。なんと設計図がない中で着工し、完成するまでに1年かかったんだとか!「ツリーハウスの管理って大変なのよ」と話しながらも、とても充実感を感じていることが伝わってきます。それは、長年対人支援や相談支援事業に関わり、誰かを大切に想ってきた内窪さんだからこそ、場所を蘇らせる原動力に変わっていったのかもしれません。

人を地域を大事にする両親の想い

こうして、イベントスペースとして活用されているBASE谷の杜ですが、内窪さんはここに頻繁に通うようになり、ご両親のことを思うことが増えたと言います。

「以前は、月1回草刈りに来るだけだったけど、頻繁に来るようになって、両親はこうして働いていたんだなとか思いを馳せるようになりました。両親が地域で正直にやっていたからこそ、私たちも信用してもらえるというか。きっと、いいことも悪いこともいろんなことがあったと思うんですけど、折り合いをつけながら守ってきたんだろうなと。人や地域との関わりって、ずっと続いていきますもんね」

▲古民家の中の風景。思わず奥の畳で大の字で寝たくなるような落ち着く空間

ご両親の想いを受けながら、土地を人が集う場に甦らせ、地域の人たちの憩いの場所として口コミで広がるBASE谷の杜。敷地内には、小川が流れ、畑にはブルーベリーや野菜たちが栽培されていて、思わず深呼吸してしまいたくなるような本当に癒される場所です。

内窪さんによると、お孫さんはこのツリーハウスを「シャンクス」と呼ぶのだそう。「シャンクス」というのは、大人気少年漫画「ワンピース」に登場する主人公・ルフィが憧れる大海賊。シャンクスは、大らかな性格でありながら、大切な仲間を絶対守る強さと優しさを持ち合わせた性格の人物とされています。
「BASE谷の杜」というネーミングも素敵ですが、こうして呼び方が変わるだけで、なんだか強くてかっこいい場所になったような気がします。お孫さんにとって、内窪さん夫婦は、こんなにすごいツリーハウスをつくった大好きで誇らしい存在なのかもしれませんね。

▲ここをイベントで利用する書道家の方が書いてくれたもの

最後に、内窪さんにこの場所に対する想いを聞いてみました。

どんなことも全部自分に返ってくると思ってるんです。だから今までもこれからも他人事みたいな仕事はしないというのは、自分の中で大切にしています。この場所は、地域や関わっている子どもたちにワクワクしてもらえるような気持ちのプレゼントとして、面白いところがあるって思ってもらえたらいいなと思います」

ここまで内窪さんのお話を伺って、内窪さんの中には、やさしさだけではなく、目の前の大切な存在(それが人であっても地域であっても)を守る強さのようなものをひしひしと感じました。
お話を聴かせていただきながら、できないかも…と思っていたとしても、思い切ってやってみると、新しい発見や新しいものの見方ができるんだなということを教えてもらったような気がします。

この場所でこれからどんなことが起こるのか、来た人をやさしく包み込んでくれるようなこの場所だからこそ生まれる化学反応がとても楽しみでなりません。
内窪さん、貴重なお話をありがとうございました!

〜取材後レポート〜
取材後、この場所で「つながりのはじまり展」というイベントが開催されたので、その様子を少しだけご紹介します。このイベントは、「TKCF NO123三股」と宮崎市の不登校の子どもたちの親を応援する会「Area lien(エリアリエン)」の共同企画イベントでした。

こちらは、消しゴムハンコの講師の方が来られ、ワークショップを開く様子。

そして、言葉と書、写真の展示もありました。

「BASE谷の杜から」の雰囲気も掛け合わさり、とても温もりのある感じが伝手ってきますね。「BASE谷の杜から」にぜひみなさんも行ってみてください。


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