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vol. 136

【レポート】社会問題井戸端会議vol.8 自治会の未来(前編)

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6月21日(金)、社会井戸端会議を開催しました。
今回のテーマは「自治会の未来」。ゲストには、三股町梶山地区民生委員の長尾浩美さんとクセつよコメンテーターとして余白学者の戸越 正路さんをお招きし、予定時刻を30分延長する熱い自治会談義が繰り広げられました。

社会井戸端会議とは

コミュニティデザインラボがつくっている3つの場「出会う場」「魅せる場」「考える場」の中の「考える場」として開催しているテーマ型地域会議です。
地域で実際に起きている課題に対し、課題の掘り下げ、課題の共有だけで終わらず、具体的にどんなアクションができるかというところまでをみんなで考えます。当事者や専門家だけでなく、様々分野の方に参加してもらい、みんなで問題を「知って」「考える」そして「つながる」きっかけをつくる場です。
第8回目となるこの日は、三股町内外から約50名もの人が集まり、「自治会」について一緒に考えました。

そもそも自治会ってなに?

みなさん「自治会」という言葉は聞いたことはあるかと思いますが、コミュラボスタッフがその意味を改めて調べてみました。
歴史を紐解いていくと、江戸時代にまで遡るのですが、日本大百科全書によると、「自治」とは、「一般に人や団体が自らのことを自らの手で処理することをいう」とされ、地方自治法では「町又は字の区域その他市町村内の一定 の区域に住所を有する者の地縁に基づいて 形成された団体」とされています。その他、総務省や三股町自治公民館連絡協議会でもさまざまな定義がされていますが、その役割的な要素をまとめると次のようになりそうです。

〇親睦
〇快適な環境づくり
〇行政との調整役
〇災害時の助け合い

もしかすると、自治会に対して義務的なイメージが強い人も多いかもしれませんが、調べていく中で分かったことは、実は自治会は独自のスタイルで運営していい「任意団体」だったのです。

自治会のイマってどうなってるの?

任意団体とは言え、令和になった現在でも、昔からの機能や役割が引き継がれている部分が残る自治会制度。地域によっては存続の危機にさらされているところも少なくありません。

実際に、自治会の抱える課題についてインターネットで検索してみると、
○高齢化による担い手の不足
○役員の負担が大きい
○加入率の減少による存続の危機
○昔ながらのルールが残っている
○お金の流れがわからない
○加入者と未加入者の不公平感
など、全国的にさまざまな問題を抱えている状況がわかります。

そこで今回は、自治会のイマを知るため、三股町梶山地区民生委員の長尾さんをゲストに、唐杉地区を例に挙げながらお話いただきました。

▲梶山地区民生委員の長尾さん

唐杉地区は、梶山地区の北部に位置しており、高齢化や自治会加入率の減少など、唐杉地区も例外ではなく、全国的な自治会が直面する問題を抱えています。

そんな中、自治会加入者から「地域で集える場所があると良いよね」という声が上がり、今年5月に集いの場づくりプロジェクトが立ち上がりました。

こちらは最初の打ち合わせの様子。もともと大工だった地域の方が、即興で設計図を書いて説明していくれている場面です。丸太なら提供できると、公園にベンチを作ることに。

こうして実現したのが、唐杉DIY。地域の方やひる学校の子どもたちも一緒になって、DIYをしながら辛すぎないカラスギカレーを食べるというワクワクする時間を過ごしました。

▲唐杉DIYの様子(https://commulab.jp/magazine/karasugidiy/

自治会をほぐして未来へひらく

地域によってもさまざまな課題がありそうな自治会のイマ。じゃあ未来はどうあったらいいんだろう?

と、未来を考える前に、ここで一旦ブレイクタイム。今回はなんと社会井戸端会議名物のお茶漬けが登場!

実は、自治会談義の裏で、せっせとお茶漬けの準備が進んでいたのです。

…ん?いつから名物だったっけ?

という疑問はさておき、三股町産のお茶や胡麻を使った特製茶漬けが振る舞われ、このお茶漬けのすごさを説明するスタッフの声もかき消されるほど、絶品でした。

さて、お腹が満たされたところで、いよいよ本題のディスカッションに入っていきます。
クセつよコメンテーターの戸越さんは、「自治会のことを聞いたとき、地域の人たちだけじゃなくて、みんなで考えてみたらどうだろうと思った。この時間は、自治会をいろんな角度から捉え直す時間にしたい」と前置きし、さまざまな立場からの意見が交わされました。

▲クセつよコメンテーターの戸越さん

自治会の現状への模索と新たな試み

参加者には、地域のみなさんをはじめ、公民館関係者や行政職員など、さまざまな人たちが集まっていましたが、話をしていくと、やはり義務や責任、管理など、なんだか重たい言葉がちらつきます。ある参加者は、つながりとしがらみについて次のように語りました。
「私の地域でも、毎年のように減少する世帯数と出生率の低下が自治会への加入率にも影響を与えている。自治会加入を促進するための工夫をしているが、現実は存続が困難になっている。“つながり”は必要だけど、“しがらみ”があると幸福度は下がるのかもしれない

一方で、あるまちに移住したという参加者は、自治会の活動を「使命感」からではなく、楽しみを見出すことで新しい意味が生まれるのではないかと提案。
「移住して、自治会活動に参加しているが、あるおじいさんから信頼されたことが自分の肯定感につながっている。活動が負担になると重圧を感じるが、それを超える楽しみとかに変えてみたらどうかな?やらなきゃいけないからではなくて、その意味を捉え直すって必要かもしれない」

それから、新しい試みとしては、LINEのようなコミュニケーションツールを活用も有効だという意見も。実際にそれをやってみた方は、定例会の内容を発信したりすると、自然に情報が入ってくるので公民館を意識する人が増えた気がすると言います。みなさん、悩みや葛藤を抱えながら自治会活動を行う中、試行錯誤し、新たな試みにもチャレンジしている自治体の姿も垣間見えました。

実は余白だらけ?自治会の未来を変換し続ける

しかし、存続の危機にある自治会は、どうしたらもっと明るい未来を見出せるのでしょうか?

先に説明した通り、自治会は任意団体です。「実はどんな活動をしてもいいという発想でもあるのが自治会の姿でもある」というファシリテーターの一言で、少し余白を感じ始めた会場。さらに、戸越さんの「もっと“面白がる”ということをみんなが共通認識として持っておくことも大事なのではないか」という言葉から、少しずつ場の雰囲気が変わっていきます。ここからいろんな発想の転換が起きていきました。

例えば、出てきたのはこんな意見。

●面白いことをしたくても、公民館の許可が得られにくい場合もある。場所を貸してくれたり、そこでイベントしてもいいですよというOKサインがあると使いやすくなるなと思った。
●真夏の暑い中草刈りをするんじゃなくて、サウナと終わった後の美味しいビールを飲むイベントにしちゃうとか。
●自治会って、本当に何やってもいいんだなって最近気づいた。自分がやりたいことを地域の人たちも楽しめるような形で、みんなを巻き込んでやってみようと思ってる。
●昔のやり方を今の時代にアップデートしていかなきゃいけない。やらなきゃいけないことはたくさんあるけど、若い人たちもやりたいことができる余白をつくることで、自発的な行動につながっていくんじゃないかな。

なんだか「自治会だから」で考えると気難しい気持ちになっていましたが、後半のみなさんの意見を聞いていると、誰かの笑顔がパッと浮かんでくるようです。
会場から出た意見ですが、楽しそうなことをやっていたら、結果として自治会っぽくなっていくような、当事者自身が楽しんでいることって結構大事なのかもしれません。

最後に、戸越さんは「暗黙の了解とか慣習で続いているものってたくさんあって、自治会としてやってきたことは大切なことだけど、もしかしたら自治会で行わなくてもいいかもしれない」と自治会のこれまでにも敬意を表しながら、棚卸しをすることで未来に余白が生まれるのではないかと示唆しました。

次回へつづく、自治会の未来

予定時間を過ぎても、熱い議論が終わらなかった今回の社会井戸端会議。それを見越して、今回はちゃんと後編も用意しています。

後編は、今回事例提供していただいた唐杉地区の次なるアクションについてみんなで考えていきます!ゲストは、なんと高校生3年生で自治会長になったという、鹿児島県鹿児島市にある唐湊山の手町内会の金子陽飛さん(フルハークウィル株式会社取締役)をお迎え。

来月も自治会の未来に向けて、どんどん自治っていきましょう!

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