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vol. 183

【レポート】社会問題井戸端会議vol.10 ゴミ捨ての醍醐味

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2025.09.25

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2025年9月1日(月)、第10回目となる「社会問題井戸端会議」を開催しました!
今回のテーマは「ゴミ捨ての醍醐味」。ゲストは、アミタホールディングス株式会社 / 一般社団法人エコシステム社会機構の宍倉 惠さん、稗田地区公民館長上西雅子さんです。

地域のほぼ全世帯が利用するであろうゴミステーション。そこはゴミだけでなく、人や情報も集まる場所です。ということは、可能性に満ちた場なのではないか!?そんな視点から、地域のゴミステーションの役割を深掘りしました。

社会井戸端会議とは

コミュニティデザインラボがつくっている3つの場「出会う場」「魅せる場」「考える場」の中の「考える場」として開催しているテーマ型地域会議です。
地域で実際に起きている課題に対し、課題の掘り下げ、課題の共有だけで終わらず、具体的にどんなアクションができるかというところまでをみんなで考えます。当事者や専門家だけでなく、様々分野の方に参加してもらい、みんなで問題を「知って」「考える」そして「つながる」きっかけをつくる場です。
第10回目となるこの日は、三股町内外から約30名もの人が集まり、一緒に考えました。

なぜ今、ゴミ捨ての話?〜稗田地区の事例から〜

まず、稗田地区公民館長の上西さんから、地区の現状と課題についてお話しいただきました。

△写真右:上西さん

稗田地区は人口1,420人、656世帯。そのうち公民館加入世帯は250世帯(約4割未満)です。地区内には10か所のゴミステーションがあり、公民館加入者のみが使用できます。ただし「ゴミステーション利用会員」という制度があり、公民館に加入せずゴミステーションだけを利用する世帯も存在します。
その結果、公民館加入者と非加入者との間に不公平感が生じ、住民の気持ちの面で分断が起きていることが課題として挙げられました。

狭い地域だからこそ、顔の見える関係性を築き、心地よく暮らしたい」と上西さんは話します。

「ゴミを捨てない人はいない。ゴミステーションは誰もが使う場所。だからこそ、この場で新しい可能性を生み出せるのでは?」そんな問いかけから、宍倉さんの事例紹介へとつながりました。

アミタホールディングスの「MEGURU STATION®」の取り組み

宍倉さんからは、資源回収ステーション「MEGURU STATION®」の事例をご紹介いただきました。

△事例を紹介してくれる宍倉さん

この取り組みは、ゴミステーションを単なるゴミ回収の場ではなく、コミュニティ形成の場として機能させており、子どもから高齢者まで多様な人々が集まり交流する場となっています。宮城県南三陸町、奈良県生駒市での実施を経て、現在は、兵庫県神戸市、福岡県大刀洗町や豊前市など、全国各地に広がっているとのこと。

具体的には、宮城県南三陸町では薪ストーブを置いて住民が自由に使えるようにしたり、奈良県生駒市ではDIYが得意な高齢者が修繕作業を行ったり、福岡県では子どもたちが駄菓子屋を運営するなど、地域の特性に合わせた取り組みが行われています。
その取り組みにより、各地で様々なことが生まれているようです。

宍倉さん「例えば、奈良県生駒市では、自治会館前の道路脇に資源回収スペースをつくりました。すると、DIYが得意な高齢者が自主的に修繕をはじめ、そこに主婦や子どもたちが自然と集まり、手伝うようになったんです。やがて、子どもがワークショップで大きな看板を作り、それをおじさんが取り付ける。そんなアクションも生まれました。さらに、小学生が“スタッフとして働きたい”と名乗り出て、名刺交換や分別の手伝いをするようになるなど、MEGURU STATION®をきっかけに新しいことが広がっていきました」

宍倉さんは、ゴミステーションがコミュニティの場となり得る理由として、資源循環の担い手になれるということは、価値の生産者にもなれる可能性があることを挙げます。誰もが関われるような余白をつくることで、様々な世代や属性の人たちが活躍できるのではないかと語ってくださいました。

参加者からは、「ステーションの管理運営方法はどうしてるの?」「地域の自治会との連携方法は?」などという質問もあり、この仕組みに興味津々の様子。宍倉氏は、「これまでは、私たちが入って管理していたものの、今後の方針としては“コモンズ運営”という形で、みんなで管理していく仕組みをつくれないかと模索している」と展望を話してくださいました。

ゴミステーションの目に見えない価値と可能性

さて、後半はディスカッションの時間です。

熱い議論を更にヒートアップさせるため熱気師も駆けつけ、汗をかきながら、会場全体のボルテージが上がってきたことを教えてくれます。

△サウナウェアに身を包み、会場の熱に汗ばむ熱気師

今回のディスカッションでは、「ゴミステーションでしたいこと」について、カードワークをしながらグループでアイデアを共有しました。

アイデアには、ゴミアートの制作、稗田地区にあるNAZOとコラボしたリユースマーケット、子どもと高齢者の交流の場など多様な提案がありました。

上西さんはこう振り返ります。
「今日改めて気づいたのは、ゴミステーション利用会員のみなさんからの会費が公民館に集まっているからこそ、私たちが還元していく必要があるということ。そして、『誰かがやらなきゃ』ではなく、自治は本来もっと自由なもの。みんなで学び、楽しみながらコミュニティを育んでいけたらいいなと思いました」

また、アミタホールディングスの事例を事前に調べてきた参加者は次のように語りました。
「人はお金や目に見える利益に価値を置きがちですが、本当に大切なのは“目に見えない価値”。宍倉さんの取り組みは、それを可視化していると感じました。例えば家庭内のトイレ掃除は誰もやりたがらないけれど、『掃除をすれば心がきれいになる』という意味づけがあれば進んで取り組める。お金やモノではなく、心の充足や会話のきっかけといった“見えない価値”を共有することで、新しいつながりが生まれるのではないでしょうか

もし私たちのまちのゴミステーションで、コーヒーを飲んだり、ちょっとした運動ができたり、楽しそうな活動が行われていたら…そこは、もう「ただのゴミ捨て場」ではなくなるかもしれません。

今回の社会井戸端会議は、ゴミステーションの「目に見えない可能性」にワクワクを感じる時間となりました。果たして、稗田地区のゴミステーションで、これからどんな変化が生まれるのか。これから上西さんや住民のみなさんとともに、ゴミステーションの可能性をさらに模索し、アクションにつなげていきたいと思います!

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