CDLマガジン
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vol. 017
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津崎 公子
ライター
私は映画がとても好きで、機会があれば映画館に通っていました。
今でこそ映画をビデオやネット配信で気軽に観られるようになりましたが当時は、劇場に直接足を運ばなければなりませんでした。私は、福岡市博多生まれで、幸い、映画館が生家から歩いてすぐのところにありました。
私の映画好きの理由はそういう背景があったと思いますが、またそれとは別に亡き母の影響が少なからずあったと思います。
母は、私をみごもっているときも、子育て中も、私を連れてひんぱんに映画を観ていたそうです。幼い私によく映画にまつわるエピソードをたくさん話してくれました。
今でも思い出すのが、私の中学時代に親子で観た総天然色映画「ベン・ハー」です。当時、「ベン・ハー」のキャッチフレーズが、「映画史上、最大のスケールと最高の感動」。史上三度目の映画化、アカデミー賞11部門、最多受賞記念作品ともうたわれ、話題の映画でした。なんとしても行きたい。でも映画館には親子同伴でないと行けません。
この映画、母も興味があったのでしょう。どうくどいたのか、分かりませんが、試験前というのに、母は、映画「ベン・ハー」を観に連れて行ってくれました。
好敵手と死闘となった 4 頭立てのダイナミックな戦車レースには、はらはらどきどき。復讐心に燃えたベン・ハーが 相手を赦すことでハンセン病の母が癒される場面には、思わず涙ぐみました。 キリストが生きていた時代を舞台に、繰り広げられるドラマは、約 4 時間と長時間ながら 退屈することもなく、ぐいぐいと映画の世界にのめり込みました。
そのせいか、翌日私は、試験間近というのに、頭は、ぼーっとして興奮状態。 今考えると、試験前というのに、親子、共謀し映画に行ったのですから、子ども子どもなら親も親です。
映画は、母と私にとってかけがえのないコミュニケーションの場でした。
映画は私の友達であり、母は、永遠の映画少女でした。