CDLマガジン
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vol. 188
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コミュラボ
ライター
今年の秋は、秋だったのか、夏だったのか、秋があったのかもわからないような、不思議な季節でしたね。そんな中で11月22日、三股町よる学校で初めての文化祭が開かれました。その名も「アートとミートの祭典」。芸術の秋と食欲の秋、その両方を満たしてしまおうという、なんとも欲張りな文化祭です。
コンセプトは「日常に刺激が足りないあなたも、刺激に疲れてしまったあなたも、帰る頃にはゴキゲンに」。

今日は、そんな言葉に誘われて会場を訪れた参加者の方から体験談が寄せられました。当日の体験を綴ったエッセイをご紹介します。
(ペンネーム:朝からハッピーターン)
急な寒暖差のせいだろうか。ここのところ、身体も心も少し重たかった。日々の忙しさに少し疲れていたのが正直なところだ。それでも、何か面白いことがありそうな予感に背中を押され、私はアートとミートの祭典へと足を運んだ。

会場に到着すると、どこからかMrs. GREEN APPLEの曲が誰かの軽快な歌声に乗って聞こえてきた。ステージから流れる弾むようなメロディに、沈んでいた気持ちが少しだけ反応するのを感じる。

学童ホールのグラウンドには、ひる・ゆう・よる学校の子どもたちが制作した作品が展示されていた。その中には、ハンディキャップのある女性が「視線」だけで描いたアートもあった。自由で、カラフルで、大胆。その表現の豊かさに、枠に囚われていた自分の感性に気づく。

「屋内では『カラぺ』が盛り上がってますよ」
カラぺってなんだ?と思いながら、誘われて中に入ると、そこにはまた自由な世界が広がっていた。

「カラぺ」は、「カラぺハリエ」といって、好きな画材で白紙に色やもようを自由につけた紙のことらしい。大人も子どもも、ただひたすらに目の前の紙に向かっている。ずらりと並んだ絵の具や道具たち。やるつもりはなかったけど、それを見た瞬間「やってみたい」という気持ちが立ち上がってきた。

外ではステージが盛り上がっているはずだし、そろそろ「焼肉まだー?」なんていう声もちらほら。そんな中、気づけば1時間近くそこで色を塗っていた。

ただ、色を塗る。それだけのことなのに、A4サイズの紙の上で、いろんな実験を何度も繰り返す。なんか気に入らないなと思っても、隣の誰かが「いいね!それ!」と言ってくれると、まぁいいかも?とまんざらでもない自分がいることにも気づく。

隣を見れば、女の子が素手で絵の具に触れたり、ぎゅうっと絞ったりしている。なんて自由なんだろう。「汚しちゃダメ」とか「行儀よく」とか、そんな日常の枷(かせ)を外して夢中になる姿が、うらやましくもあった。それでも、頭の中を空っぽにして手を動かす時間は、私にとって心地よいものだった。

カラぺの片付けが終わった17時過ぎ、待ちに待った「ミート(焼肉)の祭典」の時間だ。愉快なMC2人が、場を盛り上げてくれる。ステージの壁には、さっきみんなと描いたたくさんのカラぺが飾られ、何気なく描いた作品が役に立てたのかと思うと、少し嬉しい気持ちになった。

すると、焼肉の煙がモクモクと漂う中、おじさんが「ほら、これ食うか」と、唐突に生の「ムカゴ」をくれた。これは焼肉とは関係ない具材。山で採れたらしい。アートと、焼肉と、不意打ちのムカゴ。その脈絡のなさがなんだか可笑しかった。
「帰る頃にはゴキゲンに」

来る前に読んだキャッチコピーを思い出す。まさか本当にご機嫌になれるなんて思っていなかったけど、来た時よりもちょっとだけ気分が軽いことに気づいて、あぁこれでいいのかもなと思えた1日だった。
エッセイを寄せてくださり、ありがとうございました。もしかしたら、訪れた人の数だけいろんなドラマがあったのかもしれませんね。
コミュラボでは、三股町の地域活動に参加したみなさんの声を募集しています。あなたの心に残った風景や体験を、ぜひ教えてください。