MAGAZINE

CDLマガジン

MAGAZINE

vol. 131

【居場所の解剖学レポート】#5.「ユニーク」から考える人の居場所

profile

ライター

コミュラボ

ライター

4月22日(月)は、第5回となる居場所の解剖学を実施しました。
今回は、岡山県都窪郡早島町にある生活介護事業所 ぬか つくるとこ代表の中野厚志さんをゲストに、「ユニークから考える人の居場所」をテーマについて解剖しました。

画像
▲中野さん(右下)のエピソードで笑いに包まれるホスト3人

目次

■前回までの振り返り
■ゲスト紹介
 「ぬかつくるとこ」とは?
 行為者と発見者
■解剖トーク
 リスペクトを含めた面白がり方
 共感してくれる人を増やす
 解剖図
■次回開催について

前回までの振り返り

仮説である居場所の解剖図もバージョンアップされた前回の解剖学。第4回目は、ひと・ネットワーククリエイター/広場ニストである山下 裕子さんをゲストに招き、「偶然性から考える人の居場所」について深掘りしていきました。
山下さんからは、「居場所」というものを考える上で、大切な問いをいただき、「自分」や「個」の在り方のようなものについて、改めて考えさせていただいた回となりました。過去のレポートを振り返りたい方は、下記からご覧ください。
第1回レポート/居場所の法則(仮説)はこちら
第2回レポートはこちら
▷第3回レポートはこちら
▷第4回レポートはこちら

ゲスト紹介

さて、第5回のゲストである、生活介護事業所「ぬかつくるとこ」代表の中野さんは、15年間岡山県内の障がい者支援施設に勤務しており、その頃から障がいを持った人たちから生み出される数々のモノやコトに衝撃を受けていたと言います。
そして、2013年12月、仲間とともに岡山県都郡早島町の築100年以上の蔵を改装した建物で生活介護事業所「ぬかつくるとこ」を開所。2018年3月より小学生から高校生が通う「アトリエぬかごっこ」を開所されました。
アートを一つの媒体として、個々の個性や特性をうま味に変化しながら、現在も絶賛発酵中だという中野さん。最初からビジョンがあったというよりは、ここに来る人の「楽しい」を突き詰めた結果、今につながっていると話します。

画像
▲ぬかつくるとこ外観

「ぬかつくるとこ」とは?

「ぬかつくるとこ」は、アートを活用して自分らしい生活を送ることができる定員20名の福祉事業所です。「ぬか」という名前の由来は、漬け物などを漬ける「ぬか床」から来ているとのこと。ここに来る一人ひとりの価値や魅力が「ぬか漬」のように時間をかけてゆっくりと発酵し、社会へと広がって行くことを願って付けられたと言います。

画像
▲「ぬかつくるとこ」HPより

また、「ぬかつくるとこ」では、通ってくる利用者さんを「ぬかびとさん」と呼び、外部から「ぬか」に訪れる人たちのことを「まぜびとさん」と呼んでいるそうです。
中野「“ぬか”にはいろんな人がいます。ここに来たからと言って、何か活動をしなければならないわけではなく、大事にしているのは、何かをやってもやらなくてもいいというスタンス。何もしないことが活動ならそれも一つの活動として、ただそれを認めていく。日々予想もしないことが巻き起こっていますが、おもしろさというのは、日々の出来事から始まっているのだと思います」

行為者と発見者

そんなユニークな人たちがたくさんいる「ぬかつくるとこ」。思わず心がほっこりしたり、クスッと笑えたりするような事例をいくつも紹介していただきました。ぬかびとさんの事例を伺う中、「ぬかつくるとこ」では、その人の面白いこだわりや得意を見つける「発見者」という存在がとても大事なポイントになっていることがわかりました。ここでは、たくさんの事例の中から2つをご紹介します。

*コイケノオイケ
新聞をちぎるのが大好きな小池さん。そのこだわりを活かして、新聞の池を作り、何をしてもいいというワークショップを実施。屋外のイベントでも行い、子どもたちにも大人気のワークショップとなったようです。さらに、小池さん作の素敵な絵を活かして、Tシャツなどのプロダクトも生まれたりしているとのこと。

画像
画像
▲コイケノオイケの様子

*とだのま
こちらは、本が大好きで博学な戸田さんの部屋。戸田さんが紡ぎ出す言葉の面白さにスタッフが注目し、戸田さんの言葉が書かれたおみくじを作成。マルシェイベントに「とだのま」を作り、戸田さんがおみくじを渡してくれるというもの。イベントでは、約80人もの方がおみくじ引いてくれ、その言葉に涙を流す人もいたほど、戸田さんのファンが増えたのだとか。今まで様々なイベントに出店し、500~600ものとだみくじが世の中に出ていると言います。

画像
▲とだのまの様子

中野さんは、面白くて素敵な人たちがいても、それを発見する人がいないと、コトが何も生まれないという気づきから、2020年4月より「なんでそんなんプロジェクト」を開始。
これは、人が行う営みの中で巻き起こる、よくわからない行為に対しての見方や捉え方を「なんでやねん」とツッコみ、できるだけポジティブに捉えて楽しむための方法を模索するプロジェクトです。
中野さんは、ただツッコミを入れるのではなく、「そこに愛はあるのかい?」ということが大事なポイントだと言います。そう言われると、身近な家族や仲間の間にも結構ツッコミポイントが見つかりそうです。
HPでは、あなたの「なんでそんなん」も投稿できるようなので、ぜひ応募してみてください!

画像

解剖トーク

解剖トークでは、「ぬかつくるとこ」での取り組みを踏まえ、面白がるとはどういうことなのか、どうしたら発見者になれるのかなどについて、掘り下げていきました。

リスペクトを含めた面白がり方

中野さんの事例を伺っているだけでも「なんでそんなん」と愛着が湧くような感覚になりました。人の行為やこだわりを面白がるというのは、中野さんの言葉にあった「愛」、つまり「リスペクト」という姿勢がとても重要なポイントのように感じられます。

20年以上もの間、福祉の現場に関わっている中野さんは、ぬかびとさんをはじめ、自分のこだわりがあったり、常識に囚われないことをする人たちに自分は敵わないと感じると同時に、そこに魅力的なユニークさも感じていると話してくださいました。

中野「福祉現場だと、きっと予想もしないことが日々巻き起こっているのではないかと思います。そこをユニークと感じ取れるかどうかは、現場のスタッフにもよる。慌ただしい日々の業務の中だと、どうしても無駄を排除したり、くせやこだわりを軽減しようとしまいがちです。しかし、それを無駄と捉えずにそこに魅力を感じられる人が増えたら、可能性は広がっていくのではないでしょうか。ぬかで言うと、発酵するのを待つような感覚。どこまで待てるのかというのは、大きなキーワードかなと考えています

中野さんは、冒頭「ぬかつくるとこ」の方針について、ビジョン型ではなく、発酵型なのだと話していました。発酵型というのは、ぬかびとさんを中心に生まれたものを一緒に育てながら待っているイメージとのこと。そして、それが本当に素敵なものだからこそ、まぜびとさんやいろんな分野の人たちとつながるきっかけになっているのかもしれません。

共感してくれる人を増やす

中野さんのお話を伺っていると、「ぬかつくるとこ」の場合は、「場」が先にできるというよりは、「ぬか」というふかふかの土壌の中で、その人(個)を中心に、その人自身から「場」が広がっていくようなイメージが感じられます。

中野「福祉の現場だと、支える・支えされるというような関係性になりがちですが、“ぬか”にはその関係性があまりないかもしれません。それはやはり、真ん中に面白い人がいて、その人からいろんなものが生まれるからです。現場にいると、なかなか難しい部分だとは思いますが、面白がれる感覚を持ったスタッフが自然に集まっているのが、“ぬか”の強みかもしれません」

では、どうして「ぬかつくるとこ」には、面白がれる人が集まったり、様々な分野の人たちにもつながりが広がっているのでしょうか。そこには「共感」というキーワードがありそうです。

中野「“ぬかつくるとこ”は、福祉事業所ではありますが、デザインの力を借りて福祉を全面に出さずにプロジェクトや情報を発信しています。ネーミングも言葉遊びから生まれることが多く、そういったことがフックになって、“なにこれ?面白そう”と興味を持ってもらえるんですよね。そうやって見える形になると、共感を生みやすい状態になると思いますし、多くの人たちとつながるための入り口として、デザインはとても重要だと考えています

画像
▲「ぬかつくるとこ」HPより

確かに、目に見える形になると、そのデザインや言葉を通して、ワクワクする感覚になります。共感できる人をどのように増やしていくかということは、外とのつながりだけでなく、組織内においても大切な視点なのかもしれません。
おもしろがる感覚や発見者を増やしていくには、共感できる人を一人、また一人と増やしていくことで、組織内外の意識やカルチャー(風土)みたいなものが醸成されていく可能性を示唆していただいたような気がします。

解剖図

解剖図の方は、くせやこだわりを発見してからぬかという土壌でコトが生まれるまでを時系列で表したものです。

画像
画像

デザイナーの平野は、「いつもの解剖図とは少し異なり、中野さんの事例は、ユニークなくせやこだわりを持っている“人”から生まれる旗の立て方をされているのが特徴的。発酵を待ちながら一緒に創り上げていくことによって、みんなが楽しめるものになるような印象を受けた」と話します。
それに対し、中野さんも「スタッフもフラットな立ち位置で一緒に参加させてもらっている感覚。そして、“こと”が生まれたあとも、発酵は終わらない。それぞれのペースで常に発酵し続けていくもの」と語ってくださいました。

中野さんの最後の言葉に、これからの中野さんと「ぬか」の発酵がより一層楽しみになりましたが、今回は「ユニーク」という視点から、これまでと違ったアプローチからの「場」の発生について知ることができた回となりました。
私たちも、日々の生活の中で愛を持って「なんでそんなん」とツッコミを入れてみると、何気ない日常の中でも「楽しむ」感覚が知らず知らずのうちに身についているかもしれません。

次回開催について

次回の開催は、2024年6月11日(火)です。
第7回は、九州大学大学院人間環境学研究院専任講師であり、社会福祉士の田北雅裕さんをゲストに、「デザインから考える人の居場所」という視点から解剖していきます。
いよいよ居場所の解剖も佳境に入って参りました。お申込みがまだの方は、下記よりお申込みください。

お申込みがまだの方は、下記よりお申込みください。
▷申し込みはこちら
※一度のお申込みで全9回分が完了となります。
※お申込みいただいた方には、今後の日程と終了した回の録画をメールにてお知らせします。

\ Share This Post /

\求む!/助っ人・ご意見
\求む!/

助っ人

ご意見