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vol. 113

おもしろがり力のススメVol.2

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すぎたまさし

ライター

人生は徳をつむゲームだ!

僕が以前、働いていたデイケア(通所リハビリテーション)に吉村さん(仮名)という40代の女性が入職をしてきた。デイケアでは新人職員は、わりかし早い段階で車での送迎業務を覚えてもらうことになっていた。吉村さんも例に漏れず送迎業務を早い段階で習得することになった。
デイケアで唯一の男性職員である僕は、運転を教えるのは男性の方がいいというよくわからない理由のもと吉村さんの指導役になって朝の送迎から教えることになった。

吉村さんは、大柄で管理者である僕にも割とタメ口で話しかける、いい意味で緊張感がない女性だった。送迎範囲は吉村さんが住んでいる地域ともかぶるので道順もすぐに覚えてしまって、おおむね習得も終わってしまい、二人でワイワイ世間話をしながら送迎を行なっていた。

ある朝の送迎の際、いつも通り吉村さんがハンドルを握り僕は助手席に座った。
その日も吉村さんは慣れた感じでベテランのような雰囲気を醸し出しながらリラクッスしながら軽快に車を走らせていた。
僕も吉村さんの車に同乗することはちょっとした楽しみで、利用者さんのことや近くのスーパーの品揃えの話など他愛のない話を行いながら送迎を行なっていた。
吉村さんは軽快に車を走らせる。リラックスはしているがスピードもちょうど良く、指示器を出すタイミングも問題ない。これなら、もう来週くらいには独り立ちして朝の送迎の一角を担うことになるだろう。

ある交差点の近くに入った。
目の前の信号はまだ赤で、吉村さんは減速しながら速度を調整、このスピードのままいけば、交差点に着いた時には青信号に変わるだろう。判断は的確で減速しながら止まるか止まらないかの速度の時に信号は青に変わった。
吉村さんはブレーキから足を離し軽くアクセルを踏んで、徐々に速度を上げはじめた。すると交差点に入った瞬間、右の方から車が突っ込んできた。
吉村さんはアクセルを踏む足をブレーキに踏み替え、とっさに急ブレーキをかけ衝突を防いだ。右から突っ込んできた車は減速もせずに何事もなかったようにそのまま通り過ぎていった。
こちらが青信号で、相手が赤信号を突っ込んできた形である。

僕は鼻息を荒くしながら「あきらかに向こうが赤でしたよね!こちらがブレーキを踏まなかったら大きな事故になってましたよ!」と興奮しながら言い放った。
それを聞いている吉村さんは怒るでも、動揺するわけでもなくぼそっと「徳がたまったわ」と呟いた。僕は言っている意味がわからなかった。
今、目の前で相手の不注意もしくは、傲慢さで大きな事故になりかけたのである。一歩間違えば、命がなかったのである。何故、そんなに冷静でいられるのか、そもそも徳とはなんなのか、興奮している僕には一切わからなかった。

興奮している僕を横目に吉村さんは徳についての説明をはじめた。吉村さん曰く、自分に嫌なことがあってそれを我慢した時や何かしら良い行いを行った時は徳がたまると考えるようにしているということなのだ。逆に、今回の信号無視を行ったような相手は徳が積めない、もしくは人生の徳ポイントにマイナスがつくというようなマイルールがあるらしい。
吉村さんは続けて信号無視した相手に「極楽に行けないね~」と軽いノリでツッコミを入れていた。

この出来事は、僕の人生の中でもわりかし重要な出来事になっている。僕という人間は、人生の中でわりかし小さいことに怒ったり、落胆したりと情緒が安定していないことが多かった。自分の感情に引っ張られて冷静な判断ができないということが多かった。

吉村さんの「人生は徳をつむゲーム理論」は感情に左右されていた僕にとっては目から鱗の理論だった。この出来事をきっかけに僕も現世の利害関係だけではなく極楽浄土というハッピーエンドを迎えるために、どう徳を積むか考えながら生活を行うようになった。

別に本当に極楽浄土に行きたいわけではない(あるなら行きたいが)。そのように考えた方が人生が面白いし楽なのである。人生をおもしろがるために必要な要素。それは自分の中にマイルールを作り人生をおもしろがれるゲームにしてしまうことなのだ

この考えを取り入れてから人生が面白くなったし感情にとらわれる回数は減少していった。意地悪な人がいても、「あの人は徳が足りないね」と思えば腹も立たないし、道端のゴミも徳をつむゲームの中では重要なコインになる。

人生のゲーム化は、辛いことや悲しいこと,腹の立つことの解釈を変えてゲームをクリアするためのイベントやポイントにしてくれる。みんなも今すぐゲームにジョインして徳を貯めるゲームに参加しよう。きっと昨日より人生をおもしろがれるようになっているはずだ。

 

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