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vol. 127

【開催レポ】プレーパークってなに?冒険遊び場プレーパーク集会

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2024.04.18

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昨年の12月から、社協前広場にて実施しているゆう学校。プレーパーク(冒険遊び場)として、毎週水曜日と金曜日に行なっています。今回はそんなプレーパークについてもっと知ろうということで、3月31日(日)に「三股ではじまる冒険遊び場プレーパーク集会」を開催しました。

プレーパークとは?

みなさんは「プレーパーク(冒険遊び場)」という言葉を聞いたことがありますか?初めて聞いた人の中には、公園で楽しく遊ぶことかな?と思った人も多いかもしれません。確かに「遊ぶこと」ではあるのですが、プレーパーク(冒険遊び場)とは、こどもが「遊び」をつくる遊び場のこと。大人の決めたプログラムに沿って遊ぶのではなく、「自分の責任で自由に遊ぶ」ことが大切にされており、NPO法人日本冒険遊び場づくり協会では、次のように定義づけられています。

<冒険遊び場の定義>
冒険遊び場は、すべての子どもが自由に遊ぶことを保障する場所であり、子どもは遊ぶことで自ら育つという認識のもと、子どもと地域と共につくり続けていく、屋外の遊び場である。
(2021年3月制定 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会)

また、公園と違うのは、「プレーワーカー」という大人のスタッフがいること。プレーワーカーとは、こどもの遊びの見守りをしたり、こどもが生き生きと遊べる環境をつくったりする人のことで、プレーパークには欠かせない存在です。

今回は、宮崎市を拠点にプレイパーク等を展開する、NPO法人ヒミツキチ理事長の山下 朋子さんをお招きし、プレイパークの必要性や自分だけの「やってみたい」を実現することなどについてお話いただきました。

▲NPO法人ヒミツキチ理事長の山下 朋子さん

山下さんがプレーパークをはじめた背景

現在、コミュニティプレーワーカーとして、こどもを中心としたまちづくり等の活動を行っている山下朋子さんは宮崎市出身。元々銀行員でありながら、大阪の社会福祉協議会でのホームレス支援の手伝いや学童ボランティアなどにも携わっていたのだとか。その後、しばらく福祉業界を離れていたものの、東日本大震災を機に宮崎市に戻って来られ、児童福祉に携わるようになったと言います。

山下さん「さまざまな背景のあるこどもたちに関わる中で、“先生、どうやって遊んだらいいですか”と、こどもたちが尋ねて来たことがあったんです。遊びというものは、こども自身の中から湧き出るものだと思っていたので、それを他者に委ねるようなこどもがいることに正直少し驚きました。でも、その彼らとの出会いがプレーパークの必要性を知るきっかけとなりました」

そう語る山下さんは、こどもたちのために国の制度や法律などはすぐに変えられなくても、こどもが自由に遊べるプレーパークという場をつくることで、こども自らが育つ力をサポートできるのではないかと考えたと話します。

子どもが遊ぶのは「育ちたい」から

では、今なぜプレーパークが必要とされ、それがこどもたちの生きる力となるのでしょうか?山下さんは、令和5年12月22日に閣議決定されたこども家庭庁の「こども大綱」やこどもの発達に触れながらお話しくださいました。

こども大綱とは、「こどもまんなか社会」の実現を掲げているこども基本法を実現するために大事なことが書いてあるものです。例えば、「こども・若者は権利の主体であり、今とこれからの最善の利益を図ること」「こども・若者や子育て当事者とともに進めていくこと」「ライフステージに応じて切れ目なく十分に支援すること」など6つの基本方針が定められています。

つまり、こどもや若者の視点に立ち、彼らの意見を反映させながら、こどもにとっての利益を第一に考えていくということです。山下さんは、こどもが外で遊ぶことの権利を屋内と屋外の環境の違いなどについて、例を挙げながら説明します。

▲プレーパーク集会の外の広場には遊ぶこどもたちの姿も

山下さん「遊べるならどこでもいいじゃないと思われる方もいるかもしれませんが、外にはたくさんの素晴らしい材料がたくさんあるんです。例えば、屋内外を比較すると、実は屋内は大人が不安なく過ごしやすい環境にしてあります。危険がないようにだったり、すべすべ、ふわふわの気持ちいい素材だったり。一方、屋外の環境は、ザラザラしたり、水が冷たかったり、でこぼこ道だったりします。外には四季があり、風の温度や雨の匂いを感じたり、時には危険な目にあったり、いろんな経験をすることで五感が育っていく。だからこどもたちは外に行くんですね。そういう毎日の積み重ねの中で、こどもたちは育っています。また、私たちは“何もしない”のも遊びの一つだと考えています。無理にではなく、日頃からこどもに寄り添い、信頼関係が築ける大人がいることも非常に大事ですね

さらに、山下さんによると、触覚や運動感覚、危機管理能力、共感力など自分が動くことで育つ能力は、さまざまな経験の中で育まれ、より強く生きていける力になると言われてるのだと話します。そういった数値化できない能力は「非認知能力」と呼ばれ、この部分が育つからこそ、好奇心が湧いたり、工夫をしたり、危ないとわかったり。そうやってこどもたちは、自分の好きなことをわかっていくのだと言います。

もしかしたら大人の私たちでも、そんなに遊んでこなかったなという人や、自分の好きなことを聞かれて戸惑ってしまう人がいるかもしれません。しかし、山下さんは、それはいくつになっても手遅れということはないと力強く話します。「何歳からでもそういった感覚は養うことができる。だから、たくさん自然の中で遊んで、いろんな経験をして、いろんな人と触れ合って、豊かな人生を生きてほしいなと思っています」と胸にグッと来るようなメッセージをいただきました。

山下さんのお話から、コロナ禍でのステイホームがどれだけ子どもたちの成長に影響したのかということを感じたと同時に、「遊び」がいかに子どもたちの選択肢や可能性を広げるのかということも強く実感した時間となりました。

講演では、その他にも先進的な取り組みをしている地域の話や施策、研究結果等にも触れながら、ここに書ききれないほどのとても大切なことをお話しいただきました。山下さん、貴重なお話をありがとうございました。

三股町こどもまんなか冒険遊び場ゆう学校

さて、三股町では、そんなプレーパークがゆう学校としてスタートし、約4ヶ月が経とうとしています。後半は、ゆう学校の取り組みについて、こども未来応援団体タテヨコナナメの松岡 祐美さんと三輪 大祐さんにお話しいただきました。

▲(左)松岡 祐美さん、(右)三輪 大祐さん

松岡さんによると、タテヨコナナメと山下さんとの出会いは、昨年の5月。山下さんのお話に共感し、三股町でもプレーパークを広げたいと考えるようになったと言います。

松岡さん「山下さんのお話であったように、冒険遊び場は、こどもたちが遊びをつくることができるからこそ、こどもが本来持っている主体性を大切にすることができる素敵な場になると思いました。長期間学校を休んだ時の不安要素として、学びが止まること、友だちとのつながりが途絶えることがあるのではないかと考えています。そこで、その不安を少しでも取り除くことができたらという想いから、昨年は誰でも来られる夜の場としてよる学校、フリースクールとしてひる学校を開校。そして、夕方のの“夕”と“遊”をかけ、多世代交流の場となるゆう学校をスタートしました。人とつながれるあたたかかな場ができれば、こどもたちは安心して成長し続けていけるのではないかと思っています

次に、三輪さんは、日頃のゆう学校の様子について紹介しながら、「年齢も学年も違うこどもたちなのですが、本当にいろんな年代が混ざって遊んでいる様子が多く見られています。まだまだ始まったばかりの今のゆう学校というプレーパークをこどもたちや地域の方々とつくりあげていけたらいいなと思っています」と語りました。

▲ある日のプレイパークの様子。マシュマロを焼いたり…
▲さまざまな遊具で好きなように遊んだり、時には木登りをする子も

最後には、トークセッションとして、先に登壇いただいた3名をはじめ、都城市の森で遊びの場づくりをしているのびのびの森 池田さん、大人とこどもが自分らしく過ごせる場として野外活動を行っているてぃーだ 甲斐さん、三股町社協スタッフの7名が登壇。

参加者から感想や質問を受けながら、「放課後デイサービスをやっているが涙が出て止まらなかった」「こども大綱のことをはじめ、知らないことばっかりだった」「もっとたくさんの人に知ってほしい」など声が聞かれ、子どもたちの遊びを通した成長や未来に想いを馳せる時間となりました。

山下さん、そして集まってくださったみなさま、ありがとうございました。これからも地域の方々と一緒に、 こども真ん中冒険遊び場ゆう学校をつくり続けていきたいと思います。
ゆう学校はどなたでも参加可能なので、気になる方はぜひ気軽に遊びに来てくださいね。

<ゆう学校>
開催日時:毎週水曜・金曜 15:00~17:00
開催場所:三股町社協前広場
※詳しくは、三股町社会福祉協議会(0986-52-1246)まで。

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