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vol. 143

人生は伏線の連続。アレンジとアイデアで可能性は無限大

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「私、まっさらな状態からつくるのって好きなんですよ」
取材冒頭、そう話すのは、よる学校で火曜・水曜の担任を務める上原 さと子さん(通称、さっこさん)。現在、動画編集のお仕事や子育てをしながらよる学校に関わってくれているさっこさんですが、最初に発された言葉に、筆者も冒頭からワクワク。今回は、さっこさんのそのクリエイティブな感性がどこから来るのか、そしてよる学校の活動に対する想いを伺いました。

理想の世界は自分の周りからつくればいい

埼玉県で生まれたさっこさんは、小学校4年生の時に福島県に引っ越し、高校卒業後は専門学校に進学されました。それから、さっこさんは就職活動を始めますが、当時の日本は就職氷河期時代。就職がなかなか決まらない時代の中、さっこさんが選んだ道は郵便局員でした。

「当時は、何社受けてもなかなか就職が決まらない時代。両親からも安定した職に就くように言われる中、郵便局に就職しました。当時の郵便局は、日本郵政公社と呼ばれ、公務員扱いだったんです。本当は小学生の頃、漫画家になりたいと少し思っていたのですが、安定性を求める親の賛成が得られるはずもありません。そこで、身近にあった郵便局員も悪くないなとも思っていたんですよね。きっかけは、子どもの頃転居を機に文通を始め、郵便局に頻繁に通う中で知った記念切手でした。それから切手を集めるようなり、郵便局が好きになったのを覚えています」

さらに、さっこさんには郵便局員を目指す動機がもう一つありました。学年が上がるに連れ、さっこさんはある自分の中の想いに気づき始めたのだと語ります。

「転居したばかりの頃は、“住んでいるところ、好きじゃないな”って思ってたんです。周りは”地元愛”とか”ふるさと”を語りたがるけれど、愛着を持てなかった私にはその概念が理解できなかったんです。生まれてから住んでいた場所は好きだったし、祖母の住む場所も嫌いではなかったのに、今の場所はそうじゃない。その違いはなんだろう?どうしたら暮らしやすくなるのかな?って中高生の頃から考えていて。成長するにつれてわかった原因は、方言がわからないことで“よそ者扱い”されているような感覚だったんだと思います。私が感じた違和感は、自分が安心できる環境になっていないからかもしれないって気づいて。そしたら、自分が過ごしやすい理想郷を自分の力でつくれたらカッコいいじゃんっていう想いが芽生えていました

卒業文集によく「総理大臣になる!」と書く子もいますが、さっこさんはリアルに世の中のことを考えたり動かしたりするのも悪くないかもという想いを抱き、それが公務員試験と繋がったのだとか。

▲よる学校を見守るさっこさん

「小さい時、近所の人から大切に育てられた自覚があって、用事がなくても挨拶をしてくれる人がいたんですね。だから、心のどこかで、自分と自分の周りの人が心地よく過ごせるような環境をつくりたいと思っていて、その拠点として郵便局があったらいいなという話を面接の時にした記憶があります」

就職活動でそこまで想いを巡らせていたことに驚くばかりでしたが、「面接のために無理やり話を繋げたんです〜」と笑いながら話すさっこさん。しかし、「自分が住んだところを自分の理想にすればいい」という発想は、さっこさんの創造的な力を感じずにはいられないエピソートでした。

子どもたちに導かれたよる学校との出会い

そんな思いを抱えたさっこさんは、晴れて郵便局の試験に合格。神奈川県の藤沢市で働くことになりました。それから、28歳頃に今の旦那さんと出会い、郵便局を退職して旦那さんの地元である三股町に移住。2人の娘(現在、中学1年生と小学4年生)が生まれ、長女さんが小学5年生の時、ひょんなことからコミュラボと出会うことになります。

「その時、ちょうど樺山購買部をDIYしている時期だったんです。長女は、その隣の駄菓子屋によく行っていて、ある日『壁塗りしてきた!』って帰って来たんです。親としては、『え!壁塗りさせられたの!?』ってなるじゃないですか(笑)でも、長女は『楽しかった〜』って言っていたし、社協がやっていることがわかっていたので、それならいいかと思って。私はオープンまで現場に行かず仕舞いでしたが、長女は何度かDIYに参加していたみたいですね」

それからしばらくして、樺山購買部のDIYがひと段落すると、今度は長女さんが「夜のゆるスポ行ってくる!」と言い始めたのだとか。

「まずびっくりしましたよね(笑)夜の時間帯だし、どうゆうこと!?って思って(笑)聞けば、樺山購買部の人だと言うので、社協が関わっているなら大丈夫だと安心し、送り出すことにしました。毎週、長女が『あー楽しかった』と帰ってくるので、そのうち次女も行きたいと言うようになり、今は2人とも通っていますね」

▲ある日のゆるスポの様子

さっこさんによると、2人は数年前まで雨だと外出したがらなかったのに、今はゆるスポをとても楽しみにしているのだとか。保護者としては、驚きの連続だっただろうと思いますが、なぜよる学校の担任を務めることになったのでしょうか?
さっこさんは、なるべくしてなった気がすると話します。

「一番最初の出会いは、できたばかりのコミュラボのHPでした。2025年までに200の活動をとかっていうカウンターがTOPページにあって、これから増えていくんだろうなと他人事のように思っていました。それから、少し経ってまたHPを訪れた時に、面白そうだな、自分が関わったら楽しそうだなと、「自分事」として捉えられたんですよね。そして、何か手伝えることあったらやりますというようなメールを送りました。困った人がいたら助け合えばいいとか、自分が今ここ住んでるところを1番住みやすくすればいいんだという気持ちは昔から変わっていなかったんです

▲コミュラボHP TOP(https://commulab.jp/

軽い気持ちでメールを送ったという一方で、その想いは熱かった気がするとさっこさんは話します。そうして月日が経ち、メールを送ったことも忘れていた頃、ふと社協から連絡があり、よる学校について知ることになりました。

無駄に思えることも今につながる大事な伏線

そこからは、とんとん拍子でことが進み、よる学校でPC・スマホ教室を担当したり、担任として関わるようになったさっこさん。今どんなことを感じているのでしょうか?

「うちの子がどんな人たちとどんなふうに関わっているかっていうのがまずわかってよかったですね。安心もあるし、我が子ながらとても顔が広くて、日々の積み重ねでいろんな人と関わってきたんだなっていうのを想像したりして。多分これが自分が育てられた小さい頃の環境に近いのかなという感覚はあります。郵便局の面接の時、自分の住んでいるところを住みやすいようにしたいと考えていたことが、もしかしたら結果的にそうできてるのかなって感じたりしますね

▲ひかりの森こども園学童ホールの前から見える夕焼け

まさか昔思い描いていたことが、またここで繋がるとはと、お話を伺いながら感動してしまいましたが、さっこさんはそれらのことを「伏線を回収している」と表現します。

「今に至るまでに、私の中で伏線がいくつもあって。自分的には全ての伏線は回収していると思うし、そうでなかったとしてもそのうちに回収できると思う。人生という物語において無駄なことは何もないってよく言いますけど、40歳を超えてからそれを感じるようになりましたね

さっこさんのお話を聴いていると、人生の全てが自分の思い通りじゃなかったとしても、その決められた範囲の中で自分がいかに心地良かったり、納得できる環境をつくれるか。人の創造力というのは、そんなところでも生かされているんだなと感じます。もしかすると置かれた環境の中でも、捉え方次第で、可能性を探るヒントはいくらでもあるのかもしれません。

最後に、よる学校に関わるようになった今、さっこさんが感じている想いを伺ってみました。

「よる学校は、幼児からシニアまで参加し、多様性を認め合う参加者主役の学校です。だから、普通の学校とも違うし、不思議で面白いですよね。担任をしていると、もちろんいろんなことが巻き起こります。子どもたちの安全も守らなきゃいけないので、手放しで楽しいだけではありません。でも、ダンスが恥ずかしいと言っていた子が踊れるようになって一緒に喜んだり、PC・スマホ教室に来た大人に使い方を教えた時、『これがやりたかったの!』って言ってくれたりすると、私自身も嬉しくなります」

「今後もこの“面白い”活動を続けていくには、”興味関心で集まる人たち”がいること、挑戦してみよう、少し不安だけど気になるっていう人たちを認めてくれる存在が必要だと思います。教室の担任として、一参加者として、気になる・面白いぞっていうのが広く伝わっていくといいなと思いますね。学校という名がついていますが、毎日行く必要はありません。参加するみなさんは、『その日何かが気になってよる学校に来た』それだけで満点です!ぜひ気になる教室があったら、遊びに来てくださいね」

そんな不思議なよる学校は、この秋いよいよ開校式を迎える予定です。
ぜひ最新情報はInstagramからご確認ください!

【よる学校 】
現在オープンスクール開催中!(10月開講予定)
活動日:毎週月〜金(祝日除く)18:30〜20:15
※時間はその日によって前後する場合があります。
※木曜は不定期でイベントを開催しています。

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