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vol. 142

【レポート】社会問題井戸端会議vol.8 自治会の未来(後編)

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みなさん、自治ってますか??

ということで、7月26日(金)は、6月に実施した社会問題井戸端会議vol.8(前編)に続き、「自治会の未来」について考える後編を開催しました。「社会問題井戸端会議」とは、地域で実際に起きている課題に対し、課題の掘り下げ、課題の共有だけで終わらず、具体的にどんなアクションができるのかまでをみんなで考える場。

今回のゲストは、高校3年生のとき全国初の高校生町内会長となった、金子 陽飛(かねこ はるひ)さんです。金子さんは、鹿児島市唐湊(とそ)山の手町内会長に就任し、昨年まで4年間務めて来られました。そんな金子さんをお迎えし、本井戸端会議名物のクセつよコメンテーター、余白学者・戸越 正路(とごえ まさみ)さんと自治会の未来について考えました。

しかも今回は、絵や図形などのグラフィックを用いてリアルタイムにまとめてくれるグラフィックレコーダーの清山さんも参戦!最後に完成したグラフィックレコードも掲載しているので、お楽しみに。

前編の振り返り

6月に実施した前編では、三股町梶山地区民生委員の長尾浩美さんをお招きし、唐杉地区の事例を提供していただきながら、自治会のイマについて語りました。
振り返りたい方は、前編レポートをご覧ください。
前編レポートはこちら

エネルギーが生まれるような組織づくりを

まずは冒頭、戸越さんと金子さんの活動についてお話をしていただきました。

戸越さんは、世の中のいろんな物事を余白に絡めながら着目する余白学者としての活動だけでなく、ご自身でもシェアハウスを運営されています(戸越さんについては、社会問題井戸端会議vol.7もご参照ください)。前編でもコメンテーターを務めていただいた戸越さんは、前回までの内容を次のように振り返りました。

戸越さん「前回の井戸端会議でわかったことは、現代に存在する地域コミュニティの上には大きな石があり、それを住民の人たちが必死になって自治会の人たちが支えているような状況があるということ。そして、住民で一緒に支え合いたいという想いがある一方で、義務や責任のようなネガティブなイメージも存在している現状が明らかになりました。そこで感じたのは、その石の上に登ったら最高に楽しいよ!という声が圧倒的に足りていないなということです。もっと面白さを前面出すことによって、自治会のメリットのようなものをもっと可視化していけたらいいんじゃないかなと感じました」

そして、高校3年生で町内会長に就任し、現在「フルハークウィル株式会社」を立ち上げてまちづくりに邁進されている金子さんは次のように語ります。

金子さん「私が所属していた町内会の世帯数は約50世帯。町内会長時代は、地区住民の多様な得意を自治会運営に生かそうという視点で、自治会の仕事を可視化し、できる人ができることをやるという仕組みづくりを実践してきました。その経験から感じた重要なキーワードは、他人事から我が事への転換ですさまざまなことに自ら気づいて関心を持つと、それまで他人事だったものが、いつの間にか自分事として考えるようになるんじゃないかなと思っています」

続けて、金子さんは「昔は成り立っていた自治会だが、社会が変化する中、昔からの慣習が残り続けることで、だんだんと3G(我慢、義務、犠牲)にまみれたものになっているのではないか」と話します。同じやり方や考え方を今の時代に継続させるのではなく、「LET」という考え方を取り入れる必要があるのではないかと示唆します。

金子さん「時代は変化するものだからこそ、同じやり方や考え方を継続させるのではなく、最近は「LET」という考え方を提唱しています。“LET”というのは、LOVE・Enjpy・Thank youの頭文字を取って考えたもの。やる気やワクワク、ドキドキという感覚は、新しいものをどんどん生み出していく時に感じものですよね。ただ慢性的にやるのではなく、誰のために活動しているのかを改めて考えることが必要で、チャレンジしやすいようなエネルギーが生まれる組織というものを 目指していくことがとても大切なのではないかと思います
※金子さんをもっと知りたい方は参考記事(TBSラジオ)をご覧ください。

いい自治をしていくには?唐杉2.0を探る

前半のゲスト2人のお話にメモが止まらなかった参加者もいるほとでしたが、社会問題井戸端会議恒例のお茶漬け休憩を挟み、いよいよフリーディスカッションへ。最初のテーマは、前回から事例として上がっている唐杉地区がいい自治をしていくにはどうしたらいいかというもの。
そもそも「自治」とは、「一般に人や団体が自らのことを自らの手で処理すること」とされています(日本大百科全書より)。まず、この場では、「自治会」と「自治」を区別し、自らの手で自らのことをどう処理するか?ということに焦点を当てディスカッションが進んでいきました。

唐杉地区を知らない人のために、この日配布されてた資料に書かれていた情報を少しご紹介しておきましょう。唐杉地区はこんな地域です。

ー唐杉地区のポテンシャルー
・景色、自然が豊か
・住民同士の助け合いが生まれている。
・薬草が生えている
・町の喧騒から離れ、田圃道がある
・コンパクトな規模感の地区
・空き家がある

多角的な視点で人や地域を捉える

さまざまな魅力がある唐杉地区ですが、「高齢化による担い手の不足」「加入率の減少による自治会存続の危機」「役員に負担増」など、全国の自治会が抱える課題は同様に存在します。そんな中、今年5月に集いの場づくりプロジェクトが発足し、唐杉地区の小さな公園には、みんなでつくったベンチが設置されました。

この会議に参加していた唐杉地区のみなさんは、この場所をとても気に入っているようで「ここの広場は、見晴らしがとても良くていい環境だと感じる」「この場が集いの場になるようにベンチを作ったので、そこに一人で散歩がてら行ったり、誰かがいられるような場所になったらいいな」という声がきかれていました。

そのような魅力を受け、もし金子さんが唐杉地区の自治会長だったらどんなことをするのかファシリテーターが質問すると、金子さんは次のように話します。

金子さん「もし唐杉の自治会長になったとしたら、まず1番最初に、改めて地域の魅力の再発見を行うと思います。これは、私自身もやったことではあるんですが、町内会長に就任したばかりの頃、一軒ずつ挨拶回りをしながら住民の方の得意なことや好きなことを聞いていたんです。そうすると、何もないと思っていた地域が、多くの個性豊かな方々が住んでいる場所だったんだと大きな発見になりました。地域の良さって意外と日常の当たり前の中にあるものだったりするので、いろんな角度から見てみるというのは大切なことかもれません」

さらに、会場からは「薬草」という唐杉地区の魅力に着目し、地域の外から子どもたちを呼んだり、薬草に詳しい人がいれば、発掘大会ができるのではないかという意見で盛り上がりました。

ベースとなるやわらかいコミュニケーションとは?

しかし、何かをしようとするとき、話し合いが難しかったり、批判的な人がいたり、会費や役割などの不公平感もあったりという現状があるのも事実です。どのようにして共通のコミュニケーションをの場をつくっていけばいいのでしょうか?

金子さん「何か新しくチャレンジしたいことがあった時、全ての人を巻き込むというよりも、共感してくれる方々から少しずつ始めていくのが良いのではないかと思っています。一部の協力してくれる方や同じ想いを持つ人から少しずつ始めていくことで、少しずつ広がっていくのではないでしょうか。その時に、閉鎖的な感じではなく、参加はできないけど応援だけする人もいていい雰囲気というか、“ゆるいつながり”を認めていくことは大切だなと感じています

さらに、会場から「対話」が大切なのではないかという意見を受け、前回から参加してくれているコメンテーターの戸越さんは次のように語ります。

戸越さん「今の自治会の現状は、慣習でやらなくていいこともやっているという状況がどこの自治体に対してもあるのかなと思ってるので、 まず一度これって本当にやる必要ある?とか、課題の見直しのようなことをすると、かなりライトになるんじゃないかなとは思ってはいるんですよね。抽出されたその課題に対して、楽しみながらアイデアを出し合って最適な案をとっていくのがいいんのではないかと思ってます。ただ、その下地として、“やわらかいコミュニケーション”が取れることはとても重要なポイントかもしれません

確かに人との関わりで欠かせないコミュニケーションは必要だとわかっていても、その「質」のようなものは見落としがち。「やわらかいコミュニケーション」はどのようなものなのでしょうか?

戸越さん「コミュニケーションを取るための一つの方法として、大変さを共有する楽しいイベントみたいなことをやってみるのもいいかもしれません。 例えば、前回の事例であった唐杉カレーをみんなに振る舞うとか。それって準備は大変だけど、きっと楽しいじゃないですか。そういうことから大変さや楽しさを共有していくと、その他のことも自分事として捉え、一緒に協力していこうという下地が生まれるのではないかなと考えたりしたところです」

参加者からは、三股町では玄関先でのちょっとした井戸端会議が行われ、そこで自然と助け合いが発生している気がするという声や、面白いことをやっていると自然と人が集まり、つながっていくものではないかという声も。「“自治会の存続”ではなく“自治”が大事なのではないだろうか」という意見に拍手が起こる場面もありました。

人とのつながり方の視点を少しずらしたり、人が「おっ!面白そう」と興味を持つようなことをやることで、今までとは違うコミュニケーションが生まれるきっかけになるのかもしれません。

カラスギはまだまだこれからだカラ…

さまざまな意見が出ましたが、唐杉地区では、すでに地域に開かれた場所をつくろうと動いている人がいました。例えば、先に紹介したベンチを作った公園。その下には、畑が広がっており、コミュラボが関わる前から、「地域に開かれた植物園」のようなものをつくりたいと行動を起こしておられました。今後は、ベンチに腰掛けながら、山菜や果樹の成長を楽しんだり、ここを訪れた人たちの会話のきっかけになればと考えていらっしゃるそうです。

コミュニティガーデンのようになったら楽しそうだなとワクワクしますが、コミュラボ研究員も負けじと唐杉地区のこれからのため、知恵を捻りました。
そうして、生み出したのがこちらのキャラクター。
出来杉くんならぬ「カラスギくん」!!!

カラスギくんは、危ない道では「スピードを出したら危ないカラ!」と「〇〇だカラ」が口癖の少年。至るところに出現したら面白いのではないかと、イラストまで作ってみました。これを唐杉地区のみなさんが採用するかどうかはさておき、ひとまず笑いが取れたことに一安心(笑)
ダジャレではありますが、こんなふうに新しいアイディアをみんなで「面白いね」と笑い合うだけでも、気持ちに余白が生まれるような気がした瞬間でした。

カラスギくんに会える日が来るのかは乞うご期待ですが、あっという間に21時を回り、お開きの時間に。最後に金子さん、戸越さんからコメントをいただきました。

金子さん「お互いが助け合うことによって、日常の安心や安全、戸越さんのおっしゃる余白や余裕が出てくると思うんです。それってとても大切なことだと思っていて。その余裕の中で何か面白いことや楽しいことをしようと、少しずつ盛り上がっていくものなのかなと思ったりもします。その方法は、その地域に合った表現の仕方があると思っているので、先に話した“LET”の要素のように、楽しむという感覚は大事なポイントかなと思いますね」

戸越さん「今回みなさんのお話を受け、ある建築家の言葉である、“みんなのために作られたものは、実は誰のためのものでもなかった”というようなことを思い出しました。地域の公共の資源をみんなで大事に使って継続していきましょうというのが自治会の性質だと思いますが、実際、その土地の慣習のようなもの引っ張られるためにさまざまな問題が起きている気がしています。中には、自治会に所属しなくても、他に頼れるところがあったり、自己完結して生活していける人も存在するはず。そういった人もいる中、その場所で必ずコミュニティに必ず所属しなければいけないのかという点は私自身も考え続けていきたいと思いました」

フリーディスカッションは、ここで一旦終了となりましたが、このディスカッションを終始グラレコをしてくれていた清山さんにより、なんと!模造紙6枚にも渡るグラレコが完成。話のポイントをとてもわかりやすくまとめてくださっており、会場全員が感激した瞬間でした。

この場だけでは、唐杉地区の自治をどうするのか、何か一つの答えが出たわけではありませんが、自治会のアップデートに向けて、これからも動き続けていきます。もし唐杉地区に対する新しいアイディアや関わりたいという人がいたら、ぜひコミュラボHPからご連絡ください。

これからも唐杉2.0、続いていくカラ!

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