CDLマガジン
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vol. 019
profile
宇野鮎子
ライター
頑張れば、頑張らない人が目につくし、
頑張らなければ、頑張る人が目についてしまう。
「頑張る」って、いろんなバランスの上に成り立っている。
私たちの生活は様々な側面を持ち、
2:6:2の法則で言えば、シーンごとに属する位置は変化する。
この2:6:2を生活の中で上手く横断するバランス感覚を持ちたいものだ。
ある程度のことは自分の範囲内で済ませてしまう性格の私は、
誰かと物事を成し遂げる事に「わざわざ人と組むのだから」という価値観を持ち、
その人達と一緒に取り組む過程も結果も、いかに「正」に向けられるかを大切に思う。
ひとり一人に当事者意識(主体性)が際立てば、そこは正の場と化す。
今、目の前にいる人たちと触発しあって、その場がどんな場になるか。
それを面白がったり楽しんだりすることができる。
それは、ひとり一人に存在意義がある場。
同じバランスの日は一日としてない。
目の前の世界がどこまで2:6:2の正の極地となるか、毎日が綱引きだ。
その変動の機微を見つめ、受け入れながらこれからの未来を創造するのは、なかなかに楽しい。
だからこそ、人とのつながり方を選ぶ。
互いが対等でなければ、物事を義務感や無難に収めることに終始しがちになる。
対等であることを望む事、自分を大切にされるかを選ぶ事はわがままではない。
「支配」や「依存」がそこに無いか、注意深く拒むことは大切なことだ。
「人を大切にする」というのは、
自分を殺したり殺されたりするものではなく、生かされることであって欲しい。
「自分を大切にする」ということも同じだ。
誰かに尊重されるためには、主張する力も必要。
個々の感性を自らの手で研ぎ澄ませることは、尊重されるための準備だ。
価値観が違うから交じり合えないのではなく、
価値観が違うからすり合わせる。
成果ももちろん大切だけど、過程にこそ自分がここにいる意味が問われる。
自分の意見が成果として表現されなくても、尊重し合えていれば、
お互いに影響し合って、伝えた人の明日を形づくる。
目の前の空間でしか生きていけなかったのは、
今ほど価値観が多様でなく、
移動が困難で、
媒体も手薄だった時代の話だ。
今を生きる私たちは、
もっと自由になれるためのデザインを描くことができる。
失敗することもできるはずだ。
そもそも「頑張る」とは余分なエネルギーを必要とするもの。
正に向かえば高揚感となり、
負に向かえば疲労感となる。
「社会は理不尽だ」と豪語する人もいるけれど、理不尽は尊重の欠如だ。
その理不尽に染まっていては何も始まらない。
ひとり一人のつながりのデザインが、社会をつくっている。