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vol. 167

ブームを先取り。18歳のハンドメイド作家・うららニット物語

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2025.03.10

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コミュラボ

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最近、SNS上で韓国アイドルなどが火付け役となり、Z世代の間で編み物がブームになっているのをご存知でしょうか。三股町では、そんなブームが来る前から注目されていた、編み物を得意とするハンドメイド作家さんがいます。

彼女は、甲斐うららさん。2025年2月に高校を卒業したばかりの18歳です。小学3年生の頃に編み物と出会い、現在も作品を作り続けながら、かぎ針編み講師の資格取得も目指し活躍しています。今回は、そんな才能溢れるうららさんにお話を伺いました。

編み物は心の拠り所

編み物に出会った頃、うららさんは学校に行けない時期があったのだとか。クラスが再編されたり、担任の先生が変わったりしたこともあり、うららさんは「学校が苦手だった」と当時を振り返ります。それと同時期、唇を手で触るなどのチック症状も出現。そんなうららさんを見た母・彩香さんは、編み物を勧めてみることにしました。

すると、うららさんは編み物に夢中になり、YouTubeや本で編み方を学び始めて、あっという間にセーターまで編めるようになりました。
母・彩香さんは、「学校に行けない自分を責めることもあったけれど、編み物に没頭することで心が安定していたのでは」と、当時のうららさんの姿を振り返ります。

小学5年生になると、母・彩香さんのつながりで地元の編み物教室に通い始め、スキルがさらに向上。取材当日も、自作のセーターを着て来てくれました。
これまでに作った作品はなんとコンテナボックス3つ分!他に処分したものもあるとのことなので、実際にはもっとたくさんの作品を生み出していることになります。

うららさんは、「編み物をしている間はずっと集中していて、1日中やることも珍しくないんです。集中力はかなりついたと思います」とはにかみながら話してくれました。

自然な流れで社会を学び、ある作品で大人気に

中学生になると、自分のペースで学校や塾に通いながら、編み物を継続。この頃から、うららさんは、身の回りで「ほしい」と言ってくれる人に数百円の毛糸代だけをもらって、作品を提供することを小さく始めました。

中学卒業後、宮崎市内の定時制高校へ進学した後も、編み物に対する情熱を絶やすことなく、作品を作り続けていたうららさん。高校1年生の頃から、ハンドメイドショップの委託販売のお仕事も少しずつスタートしたと言います。

そして、2024年12月、うららニットグッズが大人気に!

きっかけはこの「パラコードストラップ」です。これは、キャンプなどで使われる丈夫な紐を編んで作られたもの。このストラップで、三股町内で人気となりました。

△うららニットインスタグラム(https://www.instagram.com/urara_knit/?hl=ja

うららさんは「パラコートを編んだストラップが流行っていたので、作ってみようと思って。最初はYoutubeを見て母に作ってあげたんです。たぶん一番最初は2024年の6月くらいだったかな。はじめのうちは親戚に作ってあげていたんですが、Instagramに載せたところ、家族以外の身近な人たちが『ほしい』と言ってくれるようになりました」と話します。

この作品が「かわいい」と口コミで広がり、三股町にはこの色とりどりのストラップをつけた地域の方が続出。

さらに、そのストラップを見た都城出身のアートディレクター・ステレオテニスさんからのお声掛けでコラボが実現することになりました。
ステレオテニスさんがデザイン、うららさんが制作を担当し、数量限定でストラップを販売。2024年12月30日に販売を開始すると、なんと即完売してしまったと言います。うららさんは「こんなに早く売り切れるとは思わなかったけれど、みんなが身につけてくれるのは嬉しい」と喜びを語ってくれました。

うららニットの常連さんは、「相談したら好みのものを作ってくれるし、逆提案もしてくれるんです。色や素材などもすぐにこんなのもありますよって教えてくれて、カスタマイズも可能なのでうれしい」と大絶賛します。

現在は、正式に商品化する将来を見据え「Hanalima(ハナリマ)」というブランド名で、母・彩香さんと共に準備を進めているのだとか。「Hanalima」は、ハワイ語で「手作り」という意味。小学生時代からフラダンスを習っているという、うららさんならではのネーミングです。

まだまだ広がる可能性

現在、うららさんは作品を作り続けながら、編み物を教えるフェーズに突入し、編み物講師の資格取得に向けて実践をしながら勉強しています。
昨年行われたクリスマスフェスでは、年下の女の子たちに編み物を教え、この取材中にも、地域の方から「編み物のことで聞きたいことがあるからまた連絡するわね」と声をかけられるなど、すでに頼りにされている様子が印象的でした。

高校卒業後は、図書館の司書の国家資格を取得することを目指し、宮崎市内の短期大学に進学予定とのこと。卒業を控えた今、3年間を振り返り、うららさんは次のように話します。
「結構長く感じたけど、自由な学校で、同じように学校に行っていない時期があるクラスメイトもいて楽だった。司書の資格も目指しながら、将来は編み物を教えられたらいいな」と笑顔を見せてくれました。

△クリスマスフェスの様子

母・彩香さんは、この取材を通して次のように振り返ります。

「娘は不登校を経験し、心が傷つきましたが、たまたま出会えた編み物で自分自身を救う事ができて、本当に幸せだと思います。これまで出会ってきた方々とのご縁や編み物のおかげで、さまざまな経験をさせていただいています。心が傷ついたことはとても苦しかったかもしれない。けれど、不登校だったからこそ得られた経験やご縁、学びがたくさんあります。私自身も娘を通し、学校に行く行かないよりも、もっと大切なことを学ぶことができました。不登校は決して絶望ではなく、新しい可能性を広げられる時間でもあったと実感しています。娘の可能性をぐんと広げてくださった三股に感謝の気持ちでいっぱいです」

彩香さんは地域への感謝を伝えてくださいましたが、それはうららさん自身が持つ強みあってこそだと感じます。もちろん、環境の変化に敏感だからこそ生きづらさもあったかもしれません。けれど、自分の「好き」「嫌い」や「心地よい」「心地悪い」といった感覚を大切にしてきたからこそ、ご縁やチャンスを自然につかむことができたのだろうと思います。

今回のうららさんの物語からは、「自分の感覚に正直に生きること」の大切さを教えていただいたようでした。うららさん、彩香さん、お話を聞かせていただきありがとうございました。
うららさんのこれからの活躍を、心から応援しています!

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