CDLマガジン
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vol. 167
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コミュラボ
ライター
最近、Z世代の間で編み物がブームになっています。韓国アイドルなどが火付け役となり、SNSでは編み物の投稿が急増。しかし、三股町では、そんなブームが来る前から注目されていた編み物を得意とするハンドメイド作家さんがいます。
彼女は、甲斐うららさん。2025年2月に高校を卒業したばかりの18歳です。小学3年生の頃に編み物と出会い、現在も作品を作り続けながら、かぎ針編み講師の資格取得も目指し活躍しています。今回は、そんな才能溢れるうららさんにお話を伺いました。
編み物に出会った頃、うららさんは学校に行けない時期があったのだとか。クラスが再編されたり、担任の先生が変わったりしたこともあり、うららさんは「学校が苦手だった」と当時を振り返ります。それと同時期に唇を手で触るなどのチック症状も出現。そんなうららさんを見た母・彩香さんは、編み物を勧めてみることにしました。
すると、うららさんは編み物に夢中になり、YouTubeや本で編み方を学び始め、あっという間にセーターまで編めるようになったと言います。母・彩香さんは、「学校に行けない自分を責めることもあったけれど、編み物に没頭することで心が安定していたのでは」と話します。
小学5年生になると、母・彩香さんのつながりで地元の編み物教室に通い始め、スキルがさらに向上。取材当日も、自作のセーターを着て来てくれました。これまでに作った作品はなんとコンテナボックス3つ分!処分したものもあるとのことなので、実際にはもっとたくさんの作品を生み出していることになります。
うららさんは、「編み物をしている間はずっと集中していて、1日中やることも珍しくない。集中力はかなりついたと思います」とはにかみながら話してくれました。
中学生になると、自分のペースで学校や塾に通いながら、編み物を継続。この頃から、身の回りで「ほしい」と言ってくれる人に数百円の毛糸代だけをもらって、作品を提供することを小さく始めました。
それから、中学卒業後は宮崎市内の定時制高校へ進学。それからも編み物に対する情熱は消えることなく、作品を作り続けていたうららさん。高校1年生の頃から、ハンドメイドショップの委託販売のお仕事も少しずつスタートしたと言います。
そして、2024年12月、うららニットグッズが大ヒット!
きっかけはこの「パラコードストラップ」です。キャンプなどで使われる丈夫な紐を編んで作るストラップで、三股町内で人気に。
「パラコートを編んだストラップが流行っていたので、作ってみようと思って。最初はYoutubeを見て母に作ってあげたんです。たぶん一番最初は2024年の6月くらいだったかな。はじめのうちは親戚に作ってあげていたんですが、Instagramに載せたところ、家族以外の身近な人たちがほしいと言ってくれるようになりました」
「かわいい」と口コミが広がり、三股町にはこの色とりどりのストラップをつけた地域の方が続出。
さらに、そのストラップを見た都城出身のアートディレクター・ステレオテニスさんからのお声掛けでコラボが実現することになりました。ステレオテニスさんがデザイン、うららさんが制作を担当し、数量限定でストラップを販売。2024年12月30日に販売を開始すると、なんと即完売してしまったと言います!うららさんは「こんなに早く売り切れるとは思わなかったけれど、みんなが身につけてくれるのは嬉しい」と喜びを語ってくれました。
うららニットの常連さんは、「相談したら好みのものを作ってくれるし、逆提案もしてくれるんです。色や素材などもすぐにこんなのもありますよって教えてくれて、カスタマイズも可能なのでうれしい」と大絶賛します。
現在は、正式に商品化する将来を見据え「Hanalima(ハナリマ)」というブランド名で、母・彩香さんと共に準備を進めているのだとか。「Hanalima」は、ハワイ語で「手作り」という意味で、小学生時代からフラダンスを習っているという、うららさんならではのネーミングです。
今、うららさんは作品を作り続けながら、編み物を教えるフェーズに突入し、編み物講師の資格取得に向けて実践をしながら勉強中とのこと。
昨年行われたクリスマスフェスでは、年下の女の子たちに編み物を教えてくれ、この取材中にも「うららさんに編み物のことで聞きたいことがあるから、また連絡するわね」と地域の方から声をかけられる場面も見られました。
高校卒業後は、図書館の司書の国家資格を取得することを目指し、宮崎市内の短期大学に進学予定とのこと。卒業を控えた今、3年間を振り返り次のように話します。「結構長く感じたけど、自由な学校で、同じように学校に行っていない時期があるクラスメイトもいて楽だった。司書の資格も目指しながら、将来は編み物を教えられたらいいな」と笑顔を見せてくれました。
母・彩香さんは、この取材を通して次のように振り返ります。
「娘は不登校を経験し心が傷つきましたが、たまたま出会えた編み物で自分自身を救う事ができて、本当に幸せだと思います。これまで出会ってきた方々とのご縁や編み物のおかげで、さまざまな経験をさせていただいています。心が傷ついたことはとても苦しかったかもしれない。けれど、不登校だったからこそ得られた経験やご縁、学びがたくさんあります。私自身も娘を通し、学校に行く行かないよりも、もっと大切なことを学ぶことができました。不登校は決して絶望ではなく、新しい可能性を広げられる時間でもあったと実感しています。娘の可能性をぐんと広げてくださった三股に感謝の気持ちでいっぱいです」
彩香さんは、感謝を伝えてくださいましたが、家族や地域の関わりの大切さも感じつつ、それはうららさん自身の持つ強みがあってこそなのかもしれないと思ったりもします。もちろん環境の変化に繊細に反応することで、生きづらさもあったかもしれません。でも、自分自身の好きや嫌い、心地いい、心地悪いなど、そういった感覚を敏感に感じる取ることができるからこそ、自然な流れでご縁やチャンスを掴むことができたようにも思えます。
今回のうららさんの物語からは、自分の感覚に正直に生きてみることの大切さを教えていただいたようでした。お話をきかせていただき、ありがとうございました。うららさんのこれからの活躍を心から応援しています!