CDLマガジン
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vol. 014
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宇野鮎子
ライター
「より良くあろうとする」
人は「何のために生きてるんだろう」と、思わずにはいられない生き物だと思っている。
そして「何のため」が自分に向くか他者に向くかによって、生き方は大きく変わるとも。
「やりたいことがない」「夢を持てと言われても」と迷いを持つ人は多い。
私もそうだ。
「欲がない」と言われたこともある。
ずいぶんな言われようだなとは思ったけれど、言葉では返せなかった。
「自分の中に何もないのか?」
と自身に問うてみると、そういうわけではない。
感情としての喜びとか悲しみはちゃんとあるのだけれど、
なるべくならばあまり起伏を望まず、凪いでいたい。
それは「何もいらない」に近い感情。
ただ、それだけだった。
「本当に自分には欲がないのか」と問う。
いや、まて。気づいていないだけかもしれない。
私は鏡さえも嘘をつくことがあるんじゃないかと疑うような人間だ。
もっと自分を疑った方がいいんじゃないか。
無意識に歩き出したように、
無意識にしゃべれるようになったように、
自分の中にどんな感情があったかなんて記憶になくても、
こうして獲得してきたものがちゃんとある。
そんなに強く願った覚えはなくとも、
その一歩を踏み出したのは間違いなく自分なわけだから、
実は欲深いのかもしれない。
自分の中にはより良くあろうとする力がある。
そう認めるだけで、楽になれた。
今だって生きようと思っていなくても呼吸して、無意識に生きてる。
生きられる。
生かされてるんだか、生きてしまってるんだかわからないけど、
意識的により良くあろうとすることって、面白いことなのかもしれない。
『本能的に生きる。』
もっと心地よさや安心に素直に生きてもいいのかもしれない。
自分の内と外の漠然とした不足感に、より良くあろうとする思いを合わせてゆく。
きっと、そういう生き方も悪くない。 より良くあれますように。