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vol. 035

与えられた言葉

date

2021.12.09

Writer

宇野鮎子

Tag

profile

宇野鮎子

ライター

「長いものに巻かれること」や「普通」や「当たり前」を疑問視してばかりの私は、

多くの人よりいろんな面で結構なスロースターターだ。

自分が揺らいでいる時、

人が与えてくれた言葉を拾い直すことがある。

人が与えてくれた言葉が今も自分の中にあるのは、

そうあり続けたい自分がそこにいる気がするし、

言葉越しに時間を遡っている間、そこは安心感で満ちている。

自分は自分でいいと思うのは難しくて、

自分は自分でしかいられないと思いがちだ。

自分が人の目にどう映っているかなんて不確かだし、

気にもならなくなってきたけれど、

自分という人間に馴染む言葉と、そうではない言葉がある。

きっと、名前は人生で一番繰り返し自分に向けられる言葉。

口癖がある人は、

その口癖が人生で一番自ら発する言葉かもしれない。

その反面、

自分に馴染まない言葉の裏には自己認識が隠れていて、

私はかつて、『素敵』という言葉がとても苦手だった。

素敵という言葉は存在していたけれど、

決して自分が使う言葉ではなかった。

今思えばその頃、心が窮屈で余白が無かったかもしれない。

けれど身近に「素敵!」と心を弾ませた声で言う女の子がいて、

彼女のその声を聞くたびに、頑なな自分が解かれていくように感じていた。

何かを見て心が動くこと。

その感動を素直に表現できる彼女こそが素敵だなと感じて、

やがて、「素敵だね」と同調することで、

少しずつ使える言葉として馴染んできた。

今でも『素敵』という言葉は私にとって特別で、

その言葉を口にする時、

いつも誰かに問いかけているような心地になる。

もし彼女から「素敵」という言葉を与えられなかったら、

花びらの線の美しさも違って見えたかもしれない。

今の私の揺るがない人間性は、

与えられてきた言葉ででき、

与えられた言葉に守られている。

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