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vol. 038

留まらないアンカーを打つ。

date

2022.01.11

Writer

宇野鮎子

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宇野鮎子

ライター

2021年は、

「宇野さんさー、何でもいいから何か書いてよ」という暴言を頂戴して、

書いたものを知らない人に見られたり(ココのこと)、

人について書く機会(進行中)に恵まれた年だった。

やってみようと思えたのは、昔、

「うのっち!思ってることを書くって、誰にでもできることじゃないんよ!!」

と、言ってくれた人と、

「鮎子さんはね、いつか書く人になったらいいよ」

と、言ってくれた人の存在が際立って大きかった。

考えはいつも、

言葉にしても、言葉にしても、

逃げていく。

だけど、書くことはアンカー(錨)を打つようなもので、

時間も自分も引き留めて、色んなことが整理されてゆく。

人の人生を書くということは、

取材対象となる人だけではなく、その人を取りまく視線を探すことでもあった。

思い出話とは違って、書いたものは書いたままに残る。

今の読み手には、今、伝えたいことを。

いつかの読み手には、今、書かなければ残らない風景を。

大切にしたいことを表す言葉を何度も何度も扱い直して、

必要な言葉だけがそこにある、純度の高い風景をつくる作業になった。

ような気がしている。(未熟者)

書き進むうちに、

「いつかあの人のことを書いてみたい」とか、

「仕上がったらあの人に送りたい」とか、

「あの人に朗読してもらったら、どんな世界観が広がるだろう」とか。

なかなか会えないけれど、私を支えてくれる人たちが次々に思い出された。

私はいつも何かを探しているけれど、自分の本心に久しぶりに会えた気がした。

感じるものが多すぎたり、落ち着きが無かったりするもので、

アンカーを打っても船は留まりきれず、

ズルズルと海底に線を引きながら進んでしまいそうだ。

しかも運んでるものなんて、重油かもしれない。

上手にアンカーが打てるようになりたいものです、ね。

『場が決まる』

その瞬間を、いつか味わえそうな予感がする。

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