CDLマガジン
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vol. 128
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コミュラボ
ライター
昨年、5周年を記念し実施された「つながる味噌フェス」。あれから早1年。今年もつながる味噌づくりの活動は、変わらず毎月第3土曜日に開催されています。今回は、つながる味噌フェスの記事では伝えきれなかった「つながる味噌のひみつ」について、主催団体である「True Meals」のみなさんにお話を伺いました。
つながる味噌づくりは、2018年4月に食育推進ボランティア団体「True Meals(トゥルーミールス)」によって始まり、 2024年4月で7年目となる活動です。ボランティア参加者は、なんと延べ約1200名を超え。最初のきっかけは、三股町社協が主催する「みまたん宅食どうぞ便(以下、どうぞ便)」でした。
どうぞ便では、「生活が大変だな…」と感じる子育て世帯に対し、定期的に無料でお米やお野菜などの食材を届けるのと一緒に、その食材を活用したレシピもお届けしています。そのレシピを考えてくださっているのが管理栄養士の花房範子さんです。もともとTure Mealsのメンバーだった花房さん。ある時、どうぞ便に入れる手作り味噌を作ってくれる人を探すもなかなか見つからないと、花房さんからTure Mealsに相談があったのだそう。
花房さんの「食卓の中心にご飯とみそ汁があることは、心身を健康に保ち、経済的なのではないか。毎日食べるみそ汁が手作りの本物の味噌だと、豊かな食の記憶として日本人の心に刻まれるはず」という想いに強く共感したTrue Mealsのみなさんは、そこから味噌づくりにチャレンジすることになりました。味噌づくりはみんな初心者で、一から勉強しながらたくさんのボランティアの方々の協力があって、今のつながる味噌づくりの形をつくり上げてきたのだと言います。
つながる味噌づくりとした背景を伺うと「活動が始まった当初、どうぞ便に封入する世帯は、30世帯からのスタートでした(現在は90件近くにまで増加)。ただ味噌をつくるだけではなく、定期的に味噌づくりを行うことで、人と人をつなげる場にもしたい。また、親子参加型にすることで、小さい子どもたちの食育の場にもしたいと考えました。同時に、お年寄りから赤ちゃんまでが集う場として、多世代が集い、日本の伝統的な調味料味噌を通しつながり、みんなが心身ともに健康になれる一つの場になったらという想いがあった」と語ってくれました。
まず、True Mealsみなさんが考えたのは 「食べることは生きること。食べたもので私たちの身体はつくられているからこそ、人や環境にやさしい食材で作られた安心安全なおいしい味噌を食べてほしい」ということでした。
そのことから、つながる味噌づくりでは、地産地消、人や環境にやさしい食材にこだわり、本当においしい味噌を食べてもらいたいという想いを込めて、一樽一樽丁寧に作りあげられています。そして、試行錯誤する中で出会ったのが大切な材料と素敵な生産者の方々です。
味噌の原材料のメインになるのが「大豆」と「米」ですが、宮崎上水園で栽培期間中化学肥料や農薬を一切使用せず、ミネラル栽培された大豆と米を使用。宮崎上水園の社長である上水さんに相談したところ、「そういうことなら」と、自社でつくっている大豆を最初の一年間完全無償でわけてくださったのだとか。日本の大豆の自給率は、農林水産省のデータによると、令和2年時点で国産大豆の自給率は「6%」。さらに、国産大豆のうち有機栽培大豆に限ると全体の「0.03%」しかないそうです。それでいて、ミネラル栽培かつ三股町産の大豆ということで、とても貴重なことがわかります。
麹もできるだけ地元のお米で作りたいと、長田で自然米を作っている岩崎さん、蓼池でこんにゃくや味噌などを作っている森さん、さだひさ麹の定久さん、上の丘農産加工房(すいかずら)の谷口さんにおいては、約1年半ほど協力を得て麹を作っていただき、主に三股町産のミネラル米で味噌づくりを行っていました。さまざまな方々に麹づくりを手伝っていただいていましたが、現在はTrue Mealsのメンバーの縁で、4年ほど前から諸塚村の七ツ山婦人加工グループの方々に麹をつけてもらっているとのこと。
塩は、串間市にある大田商店で作られている、海水を薪で炊いて煮詰める昔ながらの製法で作られたミネラル豊富な自然塩「夢の塩」が使われています。海水は串間市の都井岬沖から汲み上げ、平釜を使い1週間かけてじっくり煮詰められた職人の愛情が込められたおいしい塩。oceans によると、良質な海塩 世界選抜トップ3(2021 年)に選ばれた最高級の塩です。
最初は右も左もわからなかった状況から、活動を続ける中でさまざまな縁がつながり、素晴らしい仲間や生産者のみなさんと出会うことができたのだというTrue Mealsのみなさん。それらの原材料は、支援味噌ということから、通常より低価格で提供いただいており、力を貸してくださっている全ての方に感謝の気持ちでいっぱいだと話してくれました。
筆者の私自身も、つながる味噌を使った料理を実際に食べたことがありますが、今回のお話を伺って、次に口にするときはもっともっと大切に味わおうと思わずにはいられませんでした。
また、味噌づくりは、活動日当日だけではなく、大豆を茹でるという前日の仕込みも欠かせない作業です。最初の頃は、ゆで大豆を作るにも要領がつかめず、スタッフで交代でしながら、前日から一昼夜水につけ、その日の夜に大鍋で5~6時間かけて朝方まで徹夜で茹でていたと言います。
それから、いろいろと思考錯誤していくうち、業務用の圧力鍋ですると短時間でできることがわかり、現在は業務用の圧力鍋で作るようになりました。現在は、コメーキングスペースのスタッフや地域の方々の協力を得ながら、ゆで大豆を作っていただいてるとのこと。こうして、さまざまな方の協力があって、つながる味噌として味噌づくりを実施することができているんですね。
また、味噌づくりの際は、工程のほとんどを素手で作ります。素手で作ることで、常在菌が混ざり、より一層美味しいお味噌に仕上がるのだそう。昔は、各家庭で味噌を手作りし、それぞれの家庭の味があった美味しい手前味噌。その手作りならではの昔ながらの味わいを、このつながる味噌づくりでは大切にしています。
実際に、ある日のつながる味噌づくりの活動を覗いてみると、ホカホカの茹でたての大豆がいい香り。なんと大豆10kg、麹10kg、塩4kgの量を混ぜていくとのことで、最後の行程はかなり力が必要でしたが、作業中子どもたちの楽しそうな様子が印象的でした。
味噌を通して子どもから大人までつながり、さらに貴重な原料から生産者のみなさんの想いまで感じられるようなあたたかい場となっているつながる味噌作りの場。こうして作られたつながる味噌は、どうぞ便だけでなく、コメーキングスペースコメのお味噌汁、りんりん食堂、TrueMealsの活動でも使われています。
コメーキングスペースのスタッフによると、味噌汁を飲んだお客さんから「この味噌は売っていないんですか?」と尋ねられることも多いのだとか。しかし、つながる味噌はここにしかない唯一無二の味噌。もし味噌が欲しいなという場合は、つながる味噌づくりに参加してみてくださいね。
最後に、True Mealsのみなさんの想いが詰まったInstagram投稿から、感謝の言葉を引用してお伝えします。
「このようにして、つながる味噌づくりを通して、『人・材料・場所』すばらしいご縁に巡り逢い、最高級の材料と愛のある想いをもった素敵な仲間たちに巡り逢い、奇跡が重なってできた正に奇跡の味噌この「つながる味噌」と関わることのできる幸せを『つながる味噌』5周年を迎えた今、ひしひしと噛み締めています。これまで、「つながる味噌」を支えてくださった皆様方全てに心から感謝いたします。そして、これからも、10年…、20年…と、みんなの笑顔が未来に溢れるように…、未来にしあわせがつながるように…スタッフ一同、心から願っています」
(主催:TrueMeals~台所からつくる明るい未来~ 一同)
<つながる味噌づくりについて>
◻︎日時:毎月第3土曜日9:30~12:00
◻︎場所:ひかりの森こども園 ビオトープガーデン
◻︎参加費:無料
◻︎必要なもの:エプロン、三角巾、マスク、お手拭きタオル、飲み物
活動の後は、そのままりんりん食堂に行くことも可能です。つながる味噌を使った料理が食べられるかも。つながる味噌づくりでは、一緒に作ってくれる仲間も随時募集中です。興味がある方は、ぜひお気軽にお問合わせください!
▷Instagram:https://www.instagram.com/true_meals_since2014/?hl=ja