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vol. 047

連載「津崎忠文の3.11」山の畑を開墾する No.6

date

2022.03.11

Writer

津崎忠文

profile

津崎忠文

ライター


 被災地では各所で田んぼ、畑が海水に浸かり農作物の栽培が困難になりました。
しかしずっと農作業にたずさわってきた方たちにとっては絶望でしかありませ
んでした。働く場所の農地が無くなったのですから。


 若い人たちなら転職とか、時間をかけての農地対策もできるのでしょうが、高齢
の人たちにとってはやるせない現実だったのです。


 毎日避難所を訪れるようになるとおのずと顔見知りになる方たちがでてきます。
そして、色々と話をうかがううちに、今後の希望をぽろりと漏らす方たちがいます。


 私たちは被災された方たちののぞみで自分たちにできそうなことはできるだけ引き
受けることにしていました。


 その当時訪れていた気仙沼の橋上地区の避難所に A さんという方がいました。明る
い方で、私たちとも気軽にはなしを伺わせていただいていたんですが聞くと、山の方に
何年もほったらかしにしている畑があるそうで、この際だから、そこを農地に回復さ
せて農作業をしたいということでした。


 私たちは二つ返事でこの提案を受けました。


 次の日からまったくやったことのない作業に明け暮れることになりました。
ボランティアのだれも経験のない作業です。案内されて現地に行くと、ただのやぶ。
胸丈の木々がぼうぼうと生い茂っています。


 スコップ、つるはし、くわ、からみあった木々の根っこを抜く作業は遅々として
進まず、1 日の成果は微々たるものでした。だがしかし、あきらめないのが我がチーム
何日も通ううちに少しずつ畑らしくなっていきました。


 そして作業開始して1週間目に山の畑がついに日の目を見ました。


 その後は種を蒔き、谷川の水をやり、しながら夏野菜の成長にもつきあいました。
 わずかな希望にも前を向いて進む東北人の気骨に触れ合えた貴重な経験でした。

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