CDLマガジン
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vol. 177
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コミュラボ
ライター
2025年6月、孤独・孤立対策に取り組むNPO法人クロスフィールズのみなさんと海外の専門家たちが、三股町を訪れました。訪問の目的は、地域がどのようにつながりを育み、ごきげんに暮らせる地域をつくろうとしているのかを、現場で見て・感じて・対話すること。言葉も文化も違う中で、三股の取り組みをどのように感じられたのでしょうか。今回は、地域で実践するプレイヤーに出会い、彼らの取り組みを肌で感じていただきました。
少し背景を説明すると、孤独や孤立の問題は、日本だけでなく、今や世界中が抱える社会課題となっています。高齢化や都市化など、時代の変遷を経て、「つながりの希薄化」が人々の心や暮らしに与える影響は大きく、各国で対策が叫ばれています。
今回、三股を訪れたNPO法人クロスフィールズは、「社会課題が解決され続ける社会」の実現をビジョンに、国内外の企業や団体と社会課題の現場をつなぐことで、当事者意識を持って社会課題に取り組める人材を育成しながら、その現場と共に社会課題の解決に取り組んでいる団体です。
数年前から「孤独・孤立」をテーマとした新規事業に取り組んでおられ、その一環として、日米間の学び合いや今後の連携の可能性を探る中、今回の視察へとつながりました。
この日、クロスフィールズのみなさんと来られた海外からのゲストは、イギリスとアメリカからの3名。いずれもこのテーマに第一線で取り組む実践者です。
イギリスからは、30年以上、イギリス国内でさまざまなボランティア団体を率いてこられたポール・カンさん(写真左)。直近では「Global Initiative on Loneliness and Connection」の CEO として活躍されているとのこと。
また、アメリカからは、民間セクターから長年高齢者の孤独や家族介護支援などに取り組むモーリーン・フェルドマンさん(写真左)と、ロサンゼルス郡 高齢者・障がい者支援局 局長ローラ・トレホさん(写真右)。
モーリーンさんによると、アメリカの高齢者へのインタビューでも、「歳をとってこんなに孤独を感じるとは思わなかった」などという声が聞かれるのだとか。こうして、実際にお話ができると、孤独・孤立は本当に世界中の課題なのだなと実感が湧いてきます。
私たちからも取り組みについて説明を行いましたが、百聞は一見にしかず。地域での活動を実践している地域のプレイヤーのみなさんに直接会っていただくことにしました。
最初にゲストを迎えたのは、「歌声喫茶」を開く中西さん。オープニングソングとして、優しく澄んだ歌声で、その場を包み込んでくれ、やわらかな空気にしてくださいました。
ポールさんは、「素晴らしい歌声でした。これからもずっと歌い続けてください」と感謝が送られ、中西さんも「来てよかったわ」と嬉しそう。
会議室でのディスカッションが終わり、いよいよ地域に繰り出します。
最初に町歩きで出会ったのは、NAZOの堀田さん。地域から集まった“服”を、“福”として新たに地域に循環させる仕組みに、ゲストたちは興味津々です。
NAZOで取り扱っている、キママプロダクツの商品も手に取って気に入ってくださった様子。NAZOの2階にあるキママプロダクツの作業場も見学され、プロジェクトの起源などに耳を傾けてくださいました。
続いて、さまざまな出会いがゆるやかに起こるコメーキングスペースコメへ。スタッフを務める久保さんがいろんな質問をされていたようですが、どんなことを話していたのでしょうか。
外に出ると、偶然小学生が通りかかり、ちょっとしたコミュニケーションが生まれました。これも三股のよくある風景。
また、よる学校をはじめ、さまざまな地域活動を行う場として、園の建物や光明寺を地域に開いてくださっているひかりの森こども園・園長の屋敷さんにも出会っていただきました。
ここでは、園のこどもたちの方が私たちに興味津々で、どんどん話しかけてきてくれます。ひかりの森こども園は、自由保育を実践しながら、地域にこども園を開く日本でも先進的な園ですが、ゲストの目にはどのように映ったのでしょうか?
光明寺の先にある樺山購買部では、看板店主である公子さんが「Hello! I’m Kimiko.」と店の外に出てあたたかく迎えてくれました。
一同が昔ながらの道具に夢中になる中、「ここに到着する頃にはきっと疲れているだろうから、優しい音楽を選んだんですよ」とレコードの紹介をする公子さんに、気持ちが和らぎます。
ゲストたちは、KIMIKOの恋みくじにもチャレンジし、日本文化、いや、三股の文化に触れていただ来ました。
そして、この日のメインイベントは、よる学校の体力テスト。
総勢70名が参加する中、この日もいろんなことが同時多発的に起き、いい意味でごちゃまぜ状態のよる学校。肺活量測定は種飛ばし、眼輪筋測定はまつ毛で爪楊枝を上げられるかなど、ゲストのみなさんにも一緒になって体力テストを楽しんでいただきました。
ゲストのみなさんには、盛りだくさんの1日を過ごしていただきましたが、視察中にはこんなコメントをいただきました。
「この町で起こっていることは、“支援する・される”という関係を超えているんですね」
「この町の地域活動は、誰かの“好き”や“やってみたい”の声から始まっていて、その関係性やプロセス自体がつながりを育んでいるように感じました」
クロスフィールズの方が通訳してくださったのもありますが、町の空気感が伝わったのは、地域のプレイヤーのみなさんが普段通りのままで迎えてくれ、「自分たちのまちを、自分たちで楽しく」ということを地域で体現してくれているからこそです。
視察を終えたあとゲストのみなさんは、「よる学校では家族の一員として受け入れてくださり、本当に心温まる素敵な時間を過ごすことができた。ここにまた絶対帰ってこなきゃね!」「地域のみなさんの情熱と貢献に大きな力をもらいました」と伝えてくださいました。
今回、海外で福祉や孤独・孤立対策に取り組まれている方との出会いは初めてでしたが、日本だけでなく、抱えている問題は同じであること。そして、三股町で起こっている面白い出来事は、国や文化を超えて通じる何かが確かにあることを実感しました。私たちもいつか海外へ視察に行ってみたいと思いを馳せつつ、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思います。
クロスフィールズのみなさん、ポールさん、ローラさん、モーリーンさん、三股町の日常を一緒に楽しんでくださって、本当にありがとうございました!
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